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薬効のある身近な生きもの (2011.09.02)


 私は虫が苦手なので、蒸し暑い夏から、涼を感じる秋の気配がするとホッとします。特に苦手なのは、昆虫の蛾(ガ)や蝶(チョウ)などのチョウ類です。毒々しい羽の模様と鱗粉、そのくせ、真ん中の胴体部分は毛虫だった頃の名残のような細長い胴体をしていて、先端には目と触角があるのですから、見ためがグロテスクです。
 小学2年生の夏の早朝、大きな羽に目玉のような模様の蛾が建物の壁面にピタッと貼りついているのをジッと凝視して、怖い思いをしたのが原因かもしれません。夜になると光の方向へとパタパタと飛びながら集まって行きます。それは生物的に意味のある習性でしょうが、無気味で気持ちが悪くなります。

 そんな私でも、蝉(セミ)や蟋蟀(コオロギ)、蛙(カエル)など、鳴き声や音を発する生きものには情緒を感じます。仲間を呼び寄せ、異性を引き付ける手段として羽をこすり合せて大きな音を出すのですから、すごいパワーですね。
 季節を感じる生きものの鳴き声では、春ならば蛙、水辺の潤いと草木の緑がしだいに深まっていきます。夏ならば蝉、太陽が照りつける真夏の木陰から蝉の大合唱、酷暑が倍増するようなBGMです。そして秋には蟋蟀や鈴虫(スズムシ)、秋の夜風を感じながら、草むらから虫の音が聞こえてくると、秋の深まりが感じられます。

 こうした身近な生きもののなかには、薬として役立つものもあります。孫太郎虫(マゴタロウムシ・ヘビトンボの昆虫)は子どもの疳の虫の薬として使われてきました。また、蚯蚓(ミミズ)は、生薬名で地龍(ジリュウ)とよばれ、利尿作用があるといわれています。そして蝉の抜け殻は蝉退(ゼンタイ)という名称でよばれ、じんましんや解熱などの効果があるとされて、漢方薬の処方に含まれているものもあるそうです。蝉が苦手な人には、かえってじんましんの原因になりそうですね。幸いにも私が苦手なチョウ類を原料とする薬の話はあまり聞いたことがないので、今のところは安心していますけど。
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