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「身」に「美」と書くと、「躾(しつけ)」という字が出来上がります。なんて素晴らしい漢字なのでしょう。眺めているだけで美しくなれそうな気分がしませんか。この漢字は、日本人が作った和製漢字(国字)だそうです。
もともと「しつけ」という言葉は、「習慣性」を意味する仏教語の「じっけ(習気)」が「しつけ」に変化して、「仕付け・躾」という言葉が生まれたという話を聞きました。「習気」は、煩悩が心に残す影響で、煩悩がなくなっても残り香のように残るように、身についた慣わしや習慣は死ぬまで消えないものだそうです。
裁縫で、縫い目を正しく整えるために仮にざっと縫いつけておくことや、田畑に作物を植える際に、曲がらないようにする植え付けも、「しつけ(仕付け、躾)」と言います。仕付け糸を使うことで美しい衣服に仕立て上がります。
それから転用して、礼儀作法を教え込むことも「しつけ」になったとも言われています。
今でも、しきたりを重んずる厳格な家庭では、子育ての中で厳しい躾が行われています。箸の上げ下ろしやエンピツの持ち方、ドアの開け方や挨拶の仕方など、暮らしの中で起きるひとつひとつの出来事に対して、作法の通りに動くことを教えこまれます。そして、「人から何かをしてもらった時には、お礼を言うのよ」、「悪いことをした時には謝りましょうね」など、細かい注意が日常茶飯事に繰り返されます。しかし、現代の子育てでは、このような厳しい躾よりも子どもの個性や人格を尊重したり、自主性を重んじる傾向もあるようで、日本古来の躾け方は、薄れつつあるようです。
昔ながらの良家のお嬢様からは、そこはかとないオーラや美しい品格がにじみ出るような気がしませんか。そんなお嬢様に憧れて、服装や持ち物、姿かたちをいくら真似してみても直ぐに化けの皮は剥がれてしまいます。エレガントな立ち居振る舞いは、即席では身につかないものなのでしょう。厳しい教育を受けて身につけた美しい躾があるからこそ「お嬢様」は美しく、品のある雰囲気を醸し出すのかもしれませんね。日本で生まれた和製漢字の「躾」には、日本人が大切にしてきた美意識に対する精神が込められているような気がします。
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