リンパ系フィラリア症制圧プログラムに関わる人々のエピソード
キリバスの人の話 – Hope –
―長崎大学一盛教授からの現地レポート

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2014年9月30日掲載

出張中のキリバスで,それはとても大きな象皮病の足を持った人に会った。彼の名前はラオイロイ・ラウェアイチナ、50歳。元学校の先生であった。彼の願いはただひとつ、“自分で歩きたい”それだけである。リンパ系フィラリア症は宿主であるヒトを殺す病気ではない。しかし、同症は少なからぬヒトの健康に害を与え、体の形を変えてしまう。足が象のそれのように異様に大きくなり、大きなその足をもって残りの人生を死ぬまで生きていかなければならないのも悲しいことである。ラウェアイチナ氏は、次の世代にはこのような不幸が起こらなくなるように、そしてそのために自分が少しでも貢献できるのなら喜んで、といって彼の写真をPacELF(Pacific Programme to Eliminate Lymphatic Filariasis)のパンフレットやポスターに使うことを許してくれた。勇気のいることである。人は誰かに助けてもらえること、そして自分も誰かの役に立つと思えることが光であり、希望であるのかもしれない。

出典:”太平洋フィラリア対策最前線” 医歯薬出版、医学のあゆみ198号 p298-303、2001年

レポーター

一盛和世

長崎大学・客員教授 

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