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館長のトリビア
館長のトリビア
米国博物館見聞録 (2012.02.10)

 今年の1月9日から1月20日まで、米国の主要な科学系博物館を見てきました。極寒のこの時期、相当な寒さを予想して出掛けましたが、シカゴ、ニューヨーク、ワシントンとも雪はなく幸運でした。訪問したところは、フィールド博物館、シカゴ科学産業博物館、リバティーサイエンスセンター、スミソニアンの自然史博物館、米国ホロコースト記念博物館などです。どの施設もその展示の質の高さと規模においては全米を代表する博物館で素晴らしいものでした。
 今回の訪問で一番印象に残ったのは、どの館もそれぞれ明確なミッションを持ち、その実現に向けて大きな力を注いでいる点でした。ミッションのメッセージは、極めてシンプルなものからやや丁寧なものまでありますが、いずれもそれぞれの館の存在理由が分かりやすく述べられています。私がもっとも感銘を受けたのはシカゴ科学産業博物館(Museum of Science and Industry Chicago)の“To inspire the inventive genius in everyone”(人類の発明力を呼び覚ますために)というミッションと展示でした。膨大な展示品と展示スペースすべてが、このミッション実現のために存在しているといっても過言ではなく、ミッションを理解して館内の展示を観ると、その規模の大きさやリアリティー、ダイナミックさも含めて全てが納得できるような気がしました。
 訪問先の各館では極めて丁寧な対応をしていただきましたが、どの館もミッションと連動した活動が展開されており、規模の大小に拘わらず、それが組織全体に浸透しているとの印象を強く受けました。また、ミッションを実現するための人材や資金の確保のためには労を惜しまない姿勢は、競争社会を生き抜く企業経営そのものであると感じました。
 当館も昨年設立40周年を迎えましたが、これまでミッションらしきものはありましたが、これが本当にミッションといえるのかどうか、改めて考えさせられる良い機会を与えられたような気がします。
 もうひとつ印象に残ったことは、教育普及に対する取り組みです。親に対するプログラムでも、学校に対するプログラムでも同様ですが、テレビや書物からでは学べないこと、やりたくても学校では出来ないことや何も出来ない学校のために博物館が存在するという認識がしっかり根付いています。日本とは違い、顕著な公立の学校間格差やホームティーチングの存在があるとはいえ、完全に家庭や学校との垣根を越えた教育普及の補完システムが確立しており、その中での最適化を常に思考し実践しているように思えました。
 最後にもうひとつ、自主研修の時間を利用してスミソニアンのアメリカ歴史博物館を訪問したことです。その目的は、今から33年前の1979年に当館の資料をこの歴史博物館に展示し、歴史博物館の資料を当館で展示したことを紹介するためでした。生憎、歴史博物館の医学・科学コーナーはリニューアル中でしたが、担当のキュレーターは当時のことを知る由もなく、当時の様子を持参した資料で説明し、国際交流再開の糸口が掴めたことは極めて有意義でした。
 近い将来、お互いの展示や資料をそれぞれの館で紹介し、グローバルな新たな連携ができればとの思いを抱いて帰ってきた次第です。
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