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むかしむかし、あるところに・・・(2003.01.31)
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館長です

 誰しも子供の頃から色々なお伽噺を聞かされて育った。桃太郎、金太郎、浦島太郎、一寸法師、因幡の白兎・・・等々多くのお伽噺に記憶があろう。お伽噺にもそれぞれルーツとなる神話・伝説があるようだ。

 神話をもとにして、我が国の薬祖神として崇められているのは、大己貴命(おおなむちのみこと、大国主命など合わせて6つぐらいの異名がある)と少彦名命(すくなひこなのみこと、少名毘古那など11通りの書き方がある)である。二神が力を合わせて国を治め、人々や家畜の病気の治療法を定め、獣や昆虫の害をはらうまじないを教えた。

 ところで、大国主命と言えばお伽噺『因幡(いなば)の白兎』に登場する。大国主命が大きな荷物を背負って因幡に向かう途中、鰐に皮をはがれて丸裸の兎に出会った。「真水で体を洗い、蒲の花粉を地に撒き散らして転げまわれ」と教え、兎がその通りにすると元の肌に戻った。花粉が亜鉛華と同様に、患部を覆い、分泌物を吸収し、炎症を鎮めて回復を早めたと考えれば、極めてサイエンティフィックな話である。その後、兎に嘘を教えた兄たちの謀略で、大国主命は真っ赤に焼いた石で焼き殺されるが、神産巣日神(かんむすびのかみ)が蚶貝比売(きさがいひめ)と蛤比売(うむぎひめ)を遣わせて生き返えらせた。蚶貝比売は赤貝、蛤貝比売は蛤(はまぐり)を神格化したもので、貝の汁が火傷を治療するという民間療法から思いついたものと言われている。

 一方、少彦名命は神産巣日神の御子で、神の手の股からこぼれ落ちたとの話がある。大国主命が出雲の岬にいた時、常世の国(不老長寿の国)から蛾の皮をはいで着物にし、蔓芋のさやを割って作った船に乗ってやってきた少彦名命に出会った。少彦名命は大国主命と兄弟のように力を合わせてこの国を作り堅めた後、常世の国に帰っていった。この描写で推察されるように小さな小さな神様である。平安時代になって、小さくても知恵と力がある少彦名命をモデルに、お伽噺の『一寸法師』や『竹取物語』となって伝わった。現在、大阪道修町の少彦名神社に、古代中国の伝説上の皇帝・炎帝神農と共に祀られている。

 浦島太郎の原形は『日本書紀』『万葉集』の水江浦島子(みずのえのうらしまこ)にあり、桃太郎には吉備津彦命(きびつひこのみこと)、金太郎は坂田金時というモデルがある。お伽噺とはいえ、あだやおろそかに聞いてはならない。

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