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96歳の握手(2008.08.08)
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 少し前に田舎のおばあちゃんに会ってきました。といっても、祖母の妹ですので、私からすると大叔母にあたる人です。会いに行った時は96歳で、自分でも「昔のことは覚えているけど、さっきのことは忘れてしまう」と言って、「ところで、あんたさんはどなただったかな?」と訊ねてきます。私はその都度、「姉やんの孫です」と答えます。
 おばあちゃんは、私の祖母を今でも姉やん、と呼んでいます。そしていつも「姉やんは美人やった、何でも上手やった」とほめます。だから「姉やんの孫」というと、「道理で…あんたさんも美人さんやなあ」とほめてくれます。
 また、父が若い頃、おばあちゃんの家の瓦を葺(ふ)く手伝いをしたことをよく覚えていて、「あんときは、よう手伝ってくれたなあ」と父をねぎらってくれました。
 若い頃の苦労話もしますが、最後は「今はなんも心配なく、しあわせやわ」と結びます。週二日通っているデイサービスについて、「楽しい?」と訊ねると、「ここだけの話やけどな、口にチャックするのがコツやよ」といたずらっぽく笑って答えてくれました。
 帰る間際になると、「本当によう来てくださった」と両手でおしいただくようにして握手をしてくれます。「次に会うときは、私はこれやから」と手を合わせますが、そう言いつつも相変わらず元気に過ごしています。今回は、「あったかい手やなあ」と言って、私の手をぎゅっと握ってくれました。
 こうやって手を握ってもらうと、「次に会うときまで、私もがんばらなくちゃ」という気持ちがわいてきます。どうしてなのか、わかりません。でも、96歳のおばあちゃんの握手は、いつも私を元気づけてくれます。


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