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どこかで記録をとっておかないと。(2008.02.01)
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 節分になると、スーパーには柊(ひいらぎ)の枝をそえた鰯(いわし)が「節分鰯」として並ぶようになりました。また「恵方巻(えほうまき)」と言って、縁起のよい方角を向いて食べるという海苔巻きも、コンビニで売られるようになりました。実はどちらも、もともと全国的に行われていた行事ではありません。節分鰯は、ヤイカガシともいい、焼いた鰯の頭を柊の枝に刺し、門口に飾り、悪霊を退散させる風習です。(鰯以外の場合もあります。)これは東日本を中心に行われてきた行事で、恵方巻は関西で行われていた行事ですが、いつの間にか全国に広がったようです。

 ヤイカガシの習俗は、この近辺では、くすり博物館にも近い大口町(愛知県)で昭和50年代くらいまで行われていたそうです。セットになったものがこのあたりのスーパーで売られるようになったのは、ここ10年以内のことではないでしょうか。くすり博物館ではヤイカガシの写真を撮影するのに、薬木園の柊の枝に自宅で焼いてきた鰯の頭を刺して撮影したものでした。
 もちろん、ヤイカガシも恵方巻も、どちらも健康や幸せを願う行事ですから、全国どこでも真似してもかまわないでしょうし、何と言っても美味しい食べ物(!)がからんでいますので、真似しないでというのはどだい無理な話です。ただ、民俗学的には、全国的に広まったのはいつかなど、どこかで記録をとっておかないと、何十年かたつと判らなくなってしまうかもしれないな、と思っています。もちろん、博物館もその役割の一端を担ってはいるのですが、記録するべきものは増えていく一方です。

 ところで、「明治商売往来」(ちくま学芸文庫)や「明治物売図聚」(中公文庫)という本がありますが、これらは明治時代のさまざまな商売を解説している本です。もちろん薬屋さんも採り上げられていて、読んでいると、資料からだけではわかりづらい部分が見えてきます。
 戦前の、それもちょっとハイカラな暮らしについては、「おばあさんの知恵袋」(正・続/文化出版局)というエッセイに面白く書かれています。新しいところでは、「まだある。今でも買える“懐かしの昭和”カタログ」シリーズ(大空ポケット文庫)があります。これは、昭和時代(!)に流行したグッズを生活雑貨、駄菓子、玩具、学校・文具、食品、キャラクターに分けて丁寧にリポートしています。
 このような本はもちろん昔の生活を知るよすがとなります。さらに、かつて映画館で上映されていたニュース映画やTVの番組でさえ、今では、当時の生活を動画で見られる貴重な記録になっていますね。
 そのうち、学生さんたちが授業でまとめた地元の年中行事のレポートや、主婦の方のブログのバックナンバー、スーパーマーケットのちらしなど、意外なものが民俗学の報告に、あるいは博物館の展示に使われることになるかもしれません。


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