くすりの博物館
サイト内検索
もうひとつの学芸員室
人と薬のあゆみ 薬草に親しむ 内藤記念くすり博物館のご案内 もうひとつの学芸員室くすりの博物館トップページへ


遊ぼう!動かそう!中野コレクション
見てみて!くすり広告
パネルクイズ「資料でふりかえる鍼と灸」
やってみようツボ体操
薬と秤量によって毒にも薬にも
くすりの夜明け−近代の医薬ってどんなものだったんだろう?−
江戸に学ぶ からだと養生
綺麗の妙薬〜健やかな美と薬を求めて〜
病まざるものなし〜日本人を苦しめた感染症・病気 そして医家〜
江戸のくすりハンター 小野蘭山 −採薬を重視した本草学者がめざしたもの−
学芸員のちょっとコラム
館長のトリビア
学芸員のちょっとコラム
水を通す橋。(2006.04.07)
bar
通潤橋

 このコラムがウェブサイトに載るのは、熊本への出張からちょうど帰って一息ついている頃。前回の熊本出張の折には、ちょっとだけ時間があったので、絶対に行きたかった場所へ寄ることができました。
 行きたかったのは、江戸時代の石のアーチ橋の上。その橋の名前は、通潤橋。つうじゅんきょう、と読みます。

 私がこの橋を知ったのは小学生の頃でした。教科書にこの橋を建造した庄屋・布田保之助の伝記が載っていました。水のない台地に水を引くことができれば、豊かなみのりが期待できる。−そう考えた保之助は、石橋の上に管を通し、サイフォンの原理を利用して、谷の一方から他方へと水を流す仕組みを考え出しました。しかし、くりぬいた石をつなげて管にしようとすると、石と石のすきまから水がもれるなど、実際にはさまざまな苦労が続きました。それでも多くの人々が保之助に協力して、1年8ヶ月を経てとうとうこの橋は完成しました。

 現在では、土・日曜日の正午に橋の中央の泥抜き用の穴から放水が行われるのを見ることができます。係りの方が橋の水路に水を流すよう操作をすると、橋の中央から勢いよく水が飛び出しました。橋の手前や上にいる大勢の観光客からはわっと歓声が湧き起ります。私が行った時は、空はあいにくの曇り空でしたが、真っ白な水は空に吹き上がり、轟音をたててはるか下の川面へと落ちていきました。
 放水されている間は、水を送る側の水路には真っ白なしぶきがはねあがり、水が送られる側の貯水槽は水面が下がる様子を見ることができます。また、(欄干がないので、要注意ですが)橋の上を行き来することもできます。150年も昔の人が苦労して造った装置は、昭和に入って多少改修されていますが、現役で立派に動いていました。小学生の頃、授業中に思い描いていた石の橋は、想像していたよりさらに頑強で重厚で、びっしりと積み上げられていました。そして「みのり豊かに」という願いが、積み上げられた石のひとつひとつにこめられた橋でした。
 放水が止まり、他の観光客の方たちが帰ってしまった後も、なんだか忘れていた約束を思い出したような、そんな気持ちになって、橋をずっと眺めていました。

通潤橋について詳しく知りたい方はこちらから
熊本国府高等学校(「肥後の石橋」をごらんください)
戻る
ご意見ご感想著作権について Copyright(C), Eisai Co., Ltd. All rights reserved.