デジタルセラピューティクス

アプリが病気を治療する時代が来ています。2010年、米国にて糖尿病に対する治療効果が認められたアプリが「治療用アプリ」として、世界で初めて承認されました。人類と病気との戦いにおいて、新たなページが開かれた出来事だったといえます。21世紀はAIの時代ともいわれており、AIをはじめとするデジタルコンテンツが病気の診断や治療に大きな貢献を果たすようになってきています。
病気の診断や治療を目的とするデジタルコンテンツは、適切な方に適切な方法で利用される必要があるため、医療機器として各国の規制当局による審査や認可を受けることになっています。我が国においては、2014年の法改正により「プログラム医療機器」という新しいカテゴリが誕生し、厚生労働省による承認プロセスが確立しました。

エーザイとデジタルセラピューティクス

当社は脳神経領域およびがん領域において、治療用プログラム医療機器(デジタルセラピューティクス)の開発に挑戦しています。医薬品は有効成分が体内で直接作用することで病気に対する治療効果を発揮します。一方で、デジタルセラピューティクスは、アプリなどのデジタルコンテンツを通じて、患者様の行動に変化をもたらすことで治療効果を発揮します。この特徴を踏まえて、デジタルセラピューティクスの治療コンセプト立案といった初期段階の検討だけでなく、科学的見地から有望なデジタルセラピューティクスの種を世界中から見出す活動も進めています。現在、抗がん剤の使用に伴う副作用を、より早くより適切に処置するためのデジタルセラピューティクス開発に取り組んでいます。

デジタルセラピューティクスの開発

当社は就業時間の1%を患者様やそのご家族と共に時間を過ごすhhc活動を推進しており、そこでの気づきや患者様への想いを製品に反映していく企業文化があります。デジタルセラピューティクスにおいても、これらのhhc活動から患者様との接点となるアプリ画面の理解のしやすさ、使い勝手の良さなどの製品開発の工夫を凝らし、患者様の治療効果、ベネフィットの最大化につなげることをめざしています。
一般的に、デジタルセラピューティクスとして規制当局から承認を得るためには、客観的に治療効果を示す必要があります。当社は医薬品開発を通じた経験やノウハウを活用し、1日でも早く患者様にお届けするための戦略を立案しています。

プログラム医療機器の未来

デジタルセラピューティクスを含むプログラム医療機器には「予防」を目的とするカテゴリが存在しています。まだ世の中に「予防」をかなえるデジタルセラピューティクスは存在していませんが、進化を続けるウェアラブルデバイスやAIなどの技術革新に伴って、実現される日もそう遠くないと考えています。例えば、スマートフォンなどの携帯端末から利用者のデータを取得し、病気の発症リスクをスコア化したり、そのリスクを減らすための改善策を提示したりすることで「予防」を実現できるかもしれません。当社も病気になってから治療する製品開発に加えて、病気を「予防」する製品を中長期的にめざしていきたいと考えています。