臨床試験の多様性に関するエーザイの取り組み

エーザイの使命は、ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念である「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献し、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」を実現することであり、臨床研究においてもその実現に取り組みます。エーザイは、民族・人種・性別・年齢・社会経済状況・性同一性・居住地・身体能力に関わらず、すべての患者様の臨床試験へのアクセス拡大に努めています。臨床試験の多様性と健康格差解消を社の中核的なコミットメントと位置付けるとともに、医薬品産業界全体の意識向上にも取り組んでいます。 

グローバル企業であるエーザイにおいて、様々な文化や生活様式、経験を持つ従業員が多様な考え方や新しいアイデアを自由に表現することにより、斬新なアプローチが生まれています。革新的な発想により、医療を受ける全ての人に治療選択肢を包括的かつ公平に提供する方法を追求し続けています。臨床試験を多様な患者様集団で実施することにより医薬品の有効性および安全性をより正確に評価することができ、多様な患者様にベネフィットをもたらすことにつながります。

近年の米国食品医薬品局(FDA)の動向に沿い、エーザイは健康格差を解消するために、臨床試験における多様性の確保に取り組んでいます。これらアプローチには、これまで臨床試験への参加が少なかったコミュニティに対するアクセスを拡大するための計画が含まれており、患者様の臨床試験参加や継続に対する障壁を取り除くため、プロトコルの見直しや改訂を行っています。
さらに、エーザイは、患者様の声を反映し、医療における変革・包括性・公平性を促進するための施策や、患者様団体との連携も行っています。臨床試験参加に対する患者様の視点や障壁を理解することは、臨床試験への登録者数不足や離脱、多様な背景を持つ患者様の参加などの課題に対する解決にも繋がると考えています。例えば、より多くの患者様が地理的にアクセスできる医療機関で臨床試験を実施することで、患者様の負担を軽減し、多様な患者様の臨床試験参加を促すことができます。さらに、プロトコルに患者様の視点を取り入れることにより、臨床試験の多様性を進展させてきました。また、臨床試験において直接患者様と接している臨床試験医師や医療関係者から意見を得ることにも取り組んでいます。これらの取り組みを臨床試験プロセスの改善に向けて進化させ、私たちの目的である全ての患者様に対する包括性および公平性を確保することをめざします。このように、患者様、患者様団体、臨床試験医師、医療関係者から得られるご意見や知見は、健康の公平性を高めるという私たちのチャレンジために欠かせないものとなっています。

多様な患者様の臨床試験への参加や治療アクセスを確保するためには、教育と透明性も重要です。エーザイは患者様団体や臨床試験医師などのパートナーと協力して、患者様視点で分かりやすい臨床試験についての説明書を作成し、臨床試験に参加される患者様とのコミュニケーションギャップの解消に努めています。さらに、より幅広い人々のニーズに確実に応えるために、多言語による資料提供とともに、患者様団体との連携を深めています。

アルツハイマー病の臨床試験プログラムにおいて試験結果を一般化し認知症に関わるすべてのコミュニティが含まれるようにするためには、人口統計学的に多様な患者様を臨床試験に登録することが不可欠です。エーザイは、早期アルツハイマー病の臨床試験において、多様な患者様の参加を推進するために様々な努力を行ってきました。その結果、レカネマブの臨床第Ⅲ相Clarity AD試験において、これまで実施されたアルツハイマー病の臨床第 Ⅲ 相試験の中で最も高い人種・民族多様性を達成しました。この成果は、より多様なコミュニティにアクセスできる医療機関と臨床試験医師を選定したことに加え、コミュニティセンターや教会など様々な場所での臨床試験の周知活動、および臨床試験に参加された患者様の負担を軽減するための在宅での投与やリモートでの経過観察などの取り組みにより実現されました。多様な患者様の参加に関する革新的な取り組みは、現在進行中のプレクリニカル(無症状期)アルツハイマー病を対象としたレカネマブの臨床第Ⅲ相AHEAD試験においても実施しています。

エーザイは、最近、がん領域の臨床試験における多様性を評価する外部調査研究においても高い評価(銀賞)を獲得しました (Varma T、Mello M、Ross JSらによるレトロスペクティブな横断的研究. BMJ 2023;2:e000395)。この調査研究は、2012 年から2017 年に実施され、臨床試験に参加された患者様における女性や65 歳以上、マイノリティの人種および民族の人数とそれらの人数がどれほど明確に報告されているかを評価することにより、製薬会社25社をランキングしたものです。本評価は、エーザイの透明性へのコミットメントと、試験における多様性確保に向けた努力の証です。エーザイは臨床試験基準のパラダイムを進化させ、包括性と公平性を促進することに引き続き取り組んでいきます。

健康格差の解消は理想ではなく、不可欠なものです。エーザイは、患者様、介護者、医療機関、医療関係者、規制当局、他の製薬会社とのパートナーシップを通じて、臨床試験への参加を拡大し存在する格差に対処する方法を引き続き模索していきます。エーザイは、Clarity AD 試験などの取り組みから得られた知見を、今後の臨床試験における多様性の取り組みを推進するために活用しています。エーザイは、世界中のあらゆる地域の全ての患者様の医療格差の解消に引き続き注力し、臨床研究プロセスにおける患者様からの信頼を築くことを約束します。今後とも、患者様、医療関係者、従業員の協力のもと、すべての患者様にエーザイの医薬品を届けられるよう継続的に取り組んでまいります。

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