中国最古の薬物書。古代中国伝説上の帝王で薬祖神とされる神農が百草をなめて薬品を区分したという伝説に基づく書物である。編者はもとより、成立年代も明らかではない。一般的には、後漢代の1-2世紀頃の編纂だとされているが、残念ながら原本は古くに散逸した。しかし陶弘景(452〜536)が引用したことによりほぼ全文が残り、中国では明代、清代、日本では江戸時代に復元本が作られたり、注解書がまとめられたりした。
内容は、1年の日数と同じ365種類の植物・動物・鉱物が薬物として収載されている。人体に作用する薬効の強さによって、下薬(げやく:125種類)・中薬(ちゅうやく:120種類)・上薬(じょうやく:120種類)の3つに分類されているのが定説である。下薬・中薬・上薬は、下品・中品・上品とも呼ばれる。
当館のデジタルアーカイブの『神農本草経』は、日本に伝わった中国の古典籍を元に嘉永7年(1854)に森立之が復元を行ったものである。ただし復元の引用に『新修本草』など古く日本に伝わった文献も参考にした結果、収載された薬物の数は上薬125種類、中薬114種類、下薬118種類となっている。
<解題:野尻佳与子(当館学芸員)>
2024年2月追記
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