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2024年度館長挨拶

内藤記念くすり博物館館長 森田宏

館長 森田 宏

登録博物館 内藤記念くすり博物館

 内藤記念くすり博物館はエーザイ(株)の創業者 内藤豊次により昭和46年(1971)に設立されました。当時の設立趣意書:内藤記念くすり博物館は「くすりに関する日本のみならず、世界の資料、および過去より現代にいたる資料を広く収集し、実物に合わせて展示し、今日の、薬学および薬業の姿は、現在までどのような経過をたどってきたか、将来はどうあるべきかを学会や業界、ひとしく一般の人々にも正しく理解してもらう」とあります。

 この精神を忘れず、一般の人々に解りやすく理解してもらうように取り組みます。併せて、来館者に親しみやすく、くすりを理解し、ファンになっていただけるような博物館を目指して職員一同、全力を尽くします。

本年のトピックスを報告させていただきます。

  
薬草園 hhcガーデン

1 登録博物館に認定されました

 令和5年度の博物館法改正により 私立博物館が登録博物館として登録可能になりました。当館は、法改正が行われた令和5年度から岐阜県庁に登録申請をしてまいりました。そして文化庁より、 令和5年(2023)5月31日をもって登録博物館に認定されました これは日頃の皆様からのご利用あってのことと思います。医学・薬学・ 植物学の総合博物館としてこれからも活動してまいります。            

2 ご覧いただきたい展示館資料

第二次世界大戦中に8ヶ月で創製された「碧素(へきそ)」               

 今回は第二次世界大戦中に日本人がオールジャパンのプロジェクト体制を立ち上げ、英米以外では科学先進国のドイツも創製できなかった、和製ぺニシリン「碧素」です。

 この逸品は公益財団法人日本感染症医薬品協会からくすり博物館が寄託を受けて展示しております。令和元年(2019)に我が国の科学技術の進展を示す上で貴重な資料として、「国立科学博物館重要科学技術史資料」に登録されました。さらに、令和6年(2024)には公益社団法人日本化学会「化学遺産」に認定されました。

       

           碧素

   画像提供:公益財団法人日本感染症医薬品協会

 

「和製ペニシリン 碧素」が出来るまでの経緯

 第二次世界大戦中の日本では、陸軍で傷病兵が増加していたことから治療薬を必要としていました。英米ではペニシリンは大戦中多くの戦傷患者を救っていました。我が国も、ペニシリンの研究に注目し、昭和18年(1943)には同盟国であったドイツからベルリン大学のキーゼのペニシリンに関する論文を入手しました。これらをきっかけに軍医学校での国産ペニシリンの開発が命じられ、陸軍軍医学校少佐・稲垣克彦を中心に当時の医学・薬学・農学・理学の各分野の研究者が集まり、昭和19年(1944)12月ペニシリンの創製に成功しました。日本国中の何百種類のアオカビを集め、約8ヶ月で精製に至りました。薬品の名称は研究開発に参加した旧制第一高等学校の生徒の提案により、「碧素」と名付けられました。碧素は森永製薬と萬有製薬を中心に東京女子師範学校も加わり、わかもと製薬、明治乳業の工場で大量生産されました。東京大空襲や広島の原爆投下にも用いられ、大変効果を発揮したと報告されております。

 

 戦後日本の製薬産業発展に大きく寄与したペニシリン創製技術

 GHQの統治下にあった日本政府は昭和21年(1946)医薬品を国民生活に欠かせない「現下の緊要なる民生物質」と位置づけ、復興政策に組み入れました。製薬会社は戦時中のペニシリン製造技術を活かしペニシリン、サルファ剤などから生産を開始し、再建への足がかりとしました。 ペニシリン生産量は、戦後3年で米国、英国に次いで世界3位になりました。製薬産業の海外輸出品の第一号であり、ペニシリン創製技術は戦後の我が国の製薬産業の発展に大きく寄与しました。

 

3 企画展「認知症のいま」

 わが国の高齢化率は、令和4年(2022)に29.1%と過去最高値を記録しました。令和7年(2025)には、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されています。行政もこの10年間数多の政策(オレンジプランから新オレンジプラン総合戦略)を打ち出していましたが、さまざまな問題の解決には至りませんでした。そこで令和5年度には、認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)という法律を公布・施行し、より力を入れて認知症問題の解決に取り組み始めました。

 このように社会が変化していく中で、本企画展は歴史よりも「認知症のいま」に重点をおき、認知症に関する問題と希望について紹介しております。まず、現在全国で取り組まれている認知症への取り組みや認知症の原因・症状を取り上げたほか、その実態が次第に明らかになりつつある若年性認知症について取り上げております。全国の18-64歳の若年性認知症の発症者数は3.75万人と推測されています。若年性認知症には、従来の高齢者の認知症との付き合い方がそのまま適用できないケースも多くみられ、経済的、社会的不安を抱えている人も少なくありません。たとえば、若年性認知症の人は高齢者の認知症の人と比較して体力がある傾向にあり、行動範囲も広いため、高齢者向けのプログラムが多いデイサービスの中から、自身の生活スタイルに合った居場所を探すことが難しい等の課題があります。このような若年性認知症特有の課題に関しては、ご本人やご家族の思いをインタビューで紹介させていただいております。

 しかし問題ばかりではありません。令和5年度は認知症基本法の公布・施行と共に、アルツハイマー型認知症治療薬レカネマプの国内承認が大きなニュースとなりました。認知症を治療できる時代がいよいよスタートします。本企画展では、これからの治療や診断のほか、認知症へ向き合う際の心構えに対しても微力ながら紹介をしております。

<会期> 2024年4月26日(金)〜2025年3月30日(日)

          

           企画展図録の表紙

4 薬草園からのお誘い

 2024年5月18日に三年ぶりの春フェスタが開催されました。新型コロナウイルスの流行により一時的に中止したフェスタですが、昨年 10月21の秋フェスタから「薬草・ハーブガーデンフェスタ」と名前を変えて再開しました。リニューアル後は飲食店の出店業者の方にも来ていただき、お昼ご飯も楽しめるフェスタになりました。またフェスタごとに講師の方をお招きし薬草についての講演会をしていただいています。

 見ごろの薬草を見て、薬草を食べ、薬草についての講演会を聞く、薬草・ハーブにどっぷりと浸かる薬草・ハーブづくしの一日はいかがでしょうか。今年の秋のフェスタは10月19日(土)の開催予定です。

 皆様のお越しをお待ちしております。

       

     2024年5月の「薬草・ハーブガーデンフェスタ」の様子

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