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1998年4月29日〜10月18日
企画展「くすり収納のかたち〜印籠から百味箪笥まで〜」開催
●行商用薬箱
平安時代から鎌倉時代にかけて、社会的分業が進み、経済交流が盛んになりました。行商は、地域において不足なものを補う役割を果たして発達しました。売薬にも行商と店を構える形態がありました。売薬はかさばらず、値もよく利幅もあるので、行商にはうってつけの商品でした。
売薬業や飴菓子類の商人は特定でない顧客の場合が多かったため、街頭で自分の売品の宣伝をするために行商姿に工夫を凝らしていました。江戸は街頭の立ち売り、京坂地方は、行商の歩き売りとされていました。
<定斎薬箱 / 明治初期 / 40×30×95cm>
夏の諸病に効果がある薬として、「定斎薬」あるいは「是斎薬」があります。盛夏の侯になると、大きな箪笥のような薬箱を天秤棒で振り分けて担ぎ、腰で拍子をとって薬箱の引出しの鐶をカタカタならし、市中を歩いて行商しました。「じょさい屋」とも「じょさい売り」ともいわれ、炎天下、笠をかぶらずに歩くことで、暑気払いの効果を身をもって示していました。江戸時代から昭和初期まで、東京の夏の風物詩として良く知られていました。
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