箱題筌には「尾洲家伝来 古土佐源氏物語絵巻」とあるが絵六図をもつ『花鳥風月』の絵巻である。江戸前期に書写されたと思われる。
『花鳥風月』は『伊勢物語』と『源氏物語』との享受をめぐるお伽草子の一種であり、別名を『扇合せ物語』『新版源氏物語』『花風物語』などという。『伊勢物語』『源氏物語』基礎知識を盛り込んだ学習書としての性格をもつものである。「花鳥」と「風月」という美しい巫女姉妹を介在して、業平や光源氏の魂から伝授されるという形をとることによって、芸能性や呪術性に満ちた独特の世界を構成している。 <解題:伊藤恭子(当館学芸員)> |