人に寄生する回虫は、かつて国民の寄生率が9割を超えるといわれ多くの人を悩ませてきた。回虫駆除にはシナヨモギの蕾が用いられたが、この植物は中央アジアで栽培され、我国では100%輸入に頼っていた。第一次世界大戦で医薬品の輸入が途絶え国産化が急がれた。シナヨモギと同属の植物の栽培を昭和2年(1927)に開始した。試作の地が京都の「壬生(みぶ)」であったことからミブヨモギと命名された。長年の苦心の末、昭和15年(1940)にはミブヨモギからサントニンを初めて抽出し、国産化に成功した。回虫を駆除する特効薬として、家庭から軍隊まで広く使用された。
一方、サントニン以外にマクリ(海人草(かいにんそう))が駆虫に用いられてきた。昭和28年(1953)には大阪大学の村上信三がマクリから駆虫の有効成分・カイニン酸を発見した。独特なにおいのあるカイニン酸を飲みやすくするためにチョコレートなどで風味をつけた薬が作られた。当時、学童だった人々には忘れがたい味といわれている。
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