大正時代に多くの死者を出したインフルエンザ※の影響か、昭和になると日本の一般家庭にも体温計が普及した。当時の体温計は狂いやすく、正確な検温には定期的な校正が必要だったようである。
写真の資料は昭和10年頃に製造されたと思われる体温計検度器である。標準品の体温計と検査対象の体温計を恒温槽に挿入して比較するだけの単純なものだが、薬局向けに製造されたこの機械は1回10銭の精度検査に使われた。
製造メーカーの広告文には顧客の心理として、検査設備のある2円の体温計と設備のない1円80銭の体温計のどちらを求めるか、と購買意欲をかきたて、「価格の競走より信用の競走」と結んでいる。当時の価格でもずいぶん安い信用たたき売りのような口上である。
※ 大正7〜8年(1918-1819)に流行したスペイン風邪は、全世界で患者数6億人、死者2,300万人に達した。 |
|
体温計検度器 |