カイロ(懐炉)の起源は温めた石を布で包んだ温石とされる。もともとは寝る時にお腹に乗せて空腹を紛らわすために使われたが、腰痛や神経痛の患部を温めるための医療用としても使われた記録がある。現在は鉄粉と活性炭などで発熱させる使い捨て懐炉が主流となってしまったが、かつては使い捨てないさまざまな懐炉が考案されている。江戸時代後期に灰式懐炉と呼ばれる懐炉が登場した。金属製の容器に木炭片と灰を詰めたこの懐炉は温石よりも暖かさを持続できた。
画像は大正時代に発明された白金懐炉である。プラチナを触媒にし、ベンゼンを低温で燃焼させるこの懐炉は、当時としては革新的な技術であった。現在でもプラチナを含めた各種レアメタルは触媒化学分野で重要な元素とされ、日本人によるノーベル賞級の複雑な構造の薬剤合成とも関わりが深い。日本が誇る技術分野なのである。 |
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懐炉(ミカサ)と懐炉灰
懐炉(ハクキン) |