<その38>医療用具 医師と看護師の身なり−看護衣−
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医療現場や器具、医療スタッフの身なりを清潔に整えるルールの歴史は、比較的新しい。19世紀半ばまで、ヨーロッパの医師は手を洗わず、コートを着たまま手術や解剖を行い、術後のメスは上着のポケットに入れていた。江戸時代の日本でも、医師の診察室は自宅が一般的で、普段着のまま処置が行われた。その後の細菌学の発達により、手洗いの励行や手術室の無菌化などが進められた。
白衣の医師や看護婦の姿が見られるようになったのは、明治20年代頃からである。画像は、昭和4年(1929)の八神商店(現;八神製作所)のカタログに記載された看護衣である。昭和2年(1927)のちらし挿絵でも長いスカート丈が主流であったようである。
現在では、男女雇用機会均等法などが整備され、看護婦は看護師にその名を変えた。スカートからズボンになったり、カラフルな柄物なども現れている。医師の術着も緑色や淡い色が用いられるようになったのは、術中の目の疲れを軽減させるという実用的理由もある。
医療現場における服装も少なからず時代の流行を受ける。そのうち白衣の天使もいなくなり、同時に“白衣高血圧”などという言葉も死語になる時代も到来するのかもしれない。
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昭和4年の医療器具カタログ 看護婦のほか、医師の診察衣、手術衣も掲載されている。 |
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カタログに掲載された看護衣 |
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挿絵から再現した看護衣 |
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昭和2年の医師・看護婦らの衣服 和服用の診察衣も描かれている。 |
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