死体解剖で人体の構造がわかっても、治療においては生きている状態で体の内部を調べる必要がある。内視鏡の開発は19世紀から始まり、膀胱や尿道用のものがまず製作された。
胃の内視鏡は、1868年にドイツの医師・クスマウルが鏡を組み合わせた硬性医鏡を使ったのが最初である。ランプの光を反射させて内部を照らす金属管は普通の人には到底飲み込めるものではなく、吐き気や出血などを伴うため、大道芸人を被験者にしたといわれている。
1932年には、多数のレンズと豆電球を組み合わせ、先端の曲がる軟性胃鏡が開発された。1950年(昭和25年)には、東京大学付属病院とオリンパス光学工業(現・オリンパス)の共同開発により、柔軟な管の先端に小型カメラが付いた内視鏡(胃カメラ)が完成した。(画像参照)
現在では、より細いファイバースコープやCCD※1による画像撮影に加え、細胞採取も可能となった。150年にわたる技術開発は人間ポンプ※2でなくとも、容易にカメラを飲み込めるようにさせたのである。さらに咽喉からではなく、鼻から挿入されるタイプも開発されるに及んでは、器具を「飲み込む」ことからも開放されたといえよう。
※1 CCD=固体撮像素子の一種で、ビデオカメラ、デジタルカメラなどに使用される半導体素子である。
※2 人間ポンプ=金魚などを生きたまま飲み込み、思い通りの個体や匹数を再び口から出す大道芸。
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内視鏡 オリンパス光学工業 1961年(昭和36年) |