<その22>医療器具 病気のサインをはかる−体温計−
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発熱は病気のもっとも顕著なサインである。17世紀イタリアの医師・サンクトリウスは初めて体温を定量的数値として扱い、30年にわたって自らの体温を記録した。18世紀には医学者・ブールハーヴェは病人の体温変化に着目し、19世紀には医師・ウンデルリッヒが体温の測定記録から特定の病気の発熱のパターンを発見した。
日本では明和5年(1768)に平賀源内が温度計の製造を試み、文政9年(1826)に医師・坪井信道が「験冷熱器 (テルモメーテル)」を紹介し、稲沢宗庵が臨床で使用したのが体温測定の最初とされている。
1868年にイギリスの医師・オルバットが考案した小型の水銀体温計は、海外留学の医師らにより日本に持ち帰られ、明治15年(1882)に山崎豊太郎が、翌年に柏木幸助が製造を開始した。第一次世界大戦後には北里柴三郎が医師の要望に応え、より精度の高い体温計の量産を行った。大正時代にはインフルエンザの世界的流行もあり、一般家庭にも普及した。
初期の体温計は計測用の媒体に着色アルコールを用いたが、やがて水銀へと変わった。さらに計測時に水銀の下降を遅らせる留点を設けて目盛りを読みやすくするなどの改良が施された。
昭和50年代以降、温度により電気的抵抗値が変化するサーミスタ素子等を用いた体温計や、赤外線による非接触型体温計が登場し、より短時間で正確な体温測定を可能にしている。
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サンクトリウスの体温計(複製) |
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目盛りが44℃まである体温計 |
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腋窩体温計 |
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肛門体温計 |
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肛門体温計 |
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柏木平型体温計 |
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仁丹体温計 |
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テーコク体温計 |
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