<その21>衛生器具 母乳に近づけ、脳を育てる−哺乳瓶と粉ミルク−
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高い知能を備えた哺乳類は少なく産んで大切に育てる傾向がある。ヒトはその体格の割には長い育児期間を必要とする。また、ヒトの母乳は他の哺乳類に比べ低蛋白で糖分が多い。これは、乳児の段階では体よりも脳を成長させることを重視した戦略なのである。かつて母乳の代用とされた重湯や水飴による糖分補給も、脳の成長を守るための昔ながらの知恵だったといえよう。
ヒトは、高い知能を獲得する代償として長い育児時間や手間というコストを支払ってきたが、母乳の代わりとなる粉ミルクと、人を選ばず授乳を可能にする哺乳瓶の登場はそのコストを下げ、女性の社会進出を後押しした。
母乳に代わる人工栄養と、それを与える器具の開発が進んだのは19世紀の産業革命以降である。1860年代にはガラス製のゴムチューブ付哺乳瓶が登場し、日本でも明治4年(1871)に哺乳瓶「乳母いらず」が販売された。
1913年にはスイスのネッスル社が粉乳を発売し、大正6年(1917)には日本で和光堂が国産の粉ミルク「キノミール」を発売した。当時は牛乳と水の割合を2:3とし、糖質を加えた調合乳を粉末化したものだった。
現在では粉ミルクの成分も高品質化しているが、本来母乳に含まれる免疫成分(IgA)までは配合されていない。近い将来、免疫成分も含めて母乳の成分にきわめて近い粉ミルクが開発されるのかもしれない。
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ポスター「こなおちち キノミール」 大正〜昭和時代 |
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看板「森永ミルク」 昭和20年以前 |
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哺乳瓶 年代不明 |
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哺乳瓶 年代不明 |
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プランケット乳呑器 佐久間医科器械店製 昭和20年以前 |
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哺乳瓶 TOGO BRAND 昭和20年以前 |
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簡便哺乳器 植木雄飛製 昭和初期 |
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金太郎コナミルク 明治製菓製 昭和20年以前 |
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Breast Pump 英国製搾乳器 年代不明 |
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搾乳器 年代不明 |
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