<その19>医薬品 いつもこどもの膝小僧に−マーキュロクロム−
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昭和の半ばまで、家庭での軽い傷の手当といえば赤チンことマーキュロクロムがしばしば用いられた。
マーキュロクロムは1919年に創製された薬品で、2%の水溶液がマーキュロクロム液である。皮膚の表面の殺菌力はあるが、浸透性はなく、皮膚への刺激は少ない。薬品の色が緑がかった赤褐色であったため、俗に赤チンと呼ばれた。日本薬局方には、1939年(昭和14)に収載されたのが最初である。
明治時代以降、学校や軍隊を通して衛生教育が進み、消毒や殺菌の重要性が認識されると、家庭や小学校の保健室に手軽に使える消毒薬として常備されるようになった。水銀公害が問題となった1960年代以降は、有機水銀化合物であるマーキュロクロムは敬遠され※、1973年(昭和48)に国内生産は終了した。
近年では消毒薬の使用がかえって組織の再生を遅らせるとわかってきた。このため、専用ばんそう膏で傷口を覆って体液による皮膚の再生を促すなど、生体本来の防御作用や回復力を活用する治療が主流となりつつある。
赤チンは輸入されて販売が続いているが、今では、かつてこどもたちの膝小僧を赤く彩ったマーキュロクロムの瓶を保健室で見かけることは少なくなった。
※マーキュロクロム自体は無害といわれている。
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昭和時代のマーキュロクロム |
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東亜マーキュローム 昭和医薬品 富山 |
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マーキュロクロム 丸石製薬 大阪 |
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赤チンキ(マーキュロクルム液) 滋賀県製薬 滋賀 |
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マーキュロクロム液 荒川長太郎 愛知 |
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