仁丹は1905年(明治38)に森下博薬房より発売された口中清涼剤である。創業者・森下博氏は台湾の衛生状態の悪い地方を訪れた折に、現地の人が常用していた清涼剤をヒントに仁丹を考案したといわれている。
仁丹の処方は甘草(カンゾウ)や阿仙薬(アセンヤク)、桂皮(ケイヒ)などの生薬が中心で、製造にあたっては当時入手できる最高級の原材料を使用したといわれている。さらに森下博氏は自ら富山へ製剤技術の取得に赴き、新しい製丸機を導入して製造にあたった。
看板のトレードマークは大礼服を着た紳士を描いたものである。広告の製作年代によりデザインに若干の変遷が見られる。仁丹の販売員は薬店を訪問してはこの図案を用いた看板を設置してもらった。また、鉄道沿線には野立て看板を建てたり、電柱広告を取り付けて、あらゆる場所で「仁丹」の文字が目に付くようにした。さらに当時は珍しかった新聞の1ページ広告を連続して掲載し、全国に仁丹の名を広めた。
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看板「仁丹」 昭和20年以前 |