明治時代になると、諸外国の薬品が輸入されるようになった。コロダインもそのひとつで、黒褐色を帯びた甘味のある液体とされる。もともとは1885年のイギリスの薬局方に記載された鎮痛薬といわれ、初期の処方にはモルヒネやクロロフォルムが入っていたが、後に処方から削除された。
日本では邑田(むらた)資生堂など資生堂の各店から、明治時代の蘭方医・佐藤尚中(たかなか)の処方した薬として「神薬」の名前で販売された。神薬、コロダインとも気付け、暑気あたり、腹痛、船・車酔いなどに効くとされた。安川晃栄堂からは安川コロダインの名称で、また各地の配置売薬においても同名の薬が販売されていた。
写真の資料は、東京・本町の調剤薬局であった資生堂の薬の広告と昭和時代の製品である。資生堂では、陸軍軍医・松本順と林紀、佐藤尚中が考案した処方の薬を販売していたため、彼らの肖像が製品の権威づけとして広告に用いられたと思われる。資生堂の神薬は角ばった青い瓶を特徴とし、後世の神薬の瓶もそれを模したものが多い。
|
|
薬品「神薬」 左より邑田資生堂製、大正製薬製、細川製薬製。いずれも昭和時代の製品。
錦絵広告「神薬」 東京・資生堂の広告。神薬以外にも多数の製品を取り扱っていた。/明治11年 |