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「延喜式(えんぎしき)」は平安時代の法令集で、律令法の施行細則が記されたものです。当時の法律がわかるのはもちろん、当時の社会や文化も垣間見えるので、貴重な史資料といえます。
巻三十七には「典薬寮(てんやくりょう=宮中の医薬をつかさどった役所)」で用いられた薬のリストが書かれています。また、当時諸国(五十四国)から朝廷に納められたさまざまな物品の名前も「諸国進年料雑薬」の項に見られます。
この項目を見ると、昔の国ごとに献上した物品、つまりその国の当時の特産物がわかります。たとえば美濃国六十二種の中には、大黄(ダイオウ)、竜胆(リュウタン=リンドウ)などの薬草の名が見えます。また、山国だけあって、獺肝(カワウソの肝臓)、熊胆(クマノイ=クマの胆嚢)、猪蹄(イノシシのひづめ)、鹿茸(ロクジョウ=シカの袋角)、熊掌(クマの手のひら)なども挙がっています。
このような品々は、どのようにして遠い朝廷まで運ばれていったのでしょうか。そして、どのように用いられたのでしょうか。
歴史的な法律の本というと、どうしても敬遠しがちですが、ちょっと見方を変えるとおもしろいものが見えてきますね。
記事:内藤記念くすり博物館
稲垣 裕美 (2005年1月)
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