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4月末から5月の連休中、博物館は多くの来館者の方々で賑わいました。敷地内の薬草園は、多くの花々が咲き、1年間で最も植物が香る季節です。
ところで5月5日が何の日かご存知ですか?一般的には「こどもの日」として親しまれていますが、実はね、「薬の日」でもあるのですよ。それは千年以上も昔の故事に由来します。
611年5月5日、推古天皇は百官を率いて、奈良県の兎田野(うだの)で、鹿茸(ろくじょう・鹿の若い角)と薬草を採取する薬狩りを行なったそうです。その後、薬狩りは恒例行事となり、この日を「薬日(くすりび)」としたと日本書紀に記されています。
採取した薬草には、菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)など、薬草独特の香りの強い植物が多く含まれていたようで、こうした香りのお風呂に入浴すると、疫病や邪気を払いこどもの成長と健康をもたらす、と考える風習が今日でも残っています。私も「こどもの日」には、菖蒲湯に入ったり、笹の葉で包まれた粽(ちまき)を食べたりしました。いずれも薬草が香る懐かしい思い出です。地方によっては、菖蒲と蓬を束ねて軒先に挿して飾ることによって、厄除けや無病息災を祈願するところもあるようです。
古くは、「薬玉(くすだま)」を軒先にかけるという事も行なわれました。「薬玉」というと、現在では式典や運動会の際に用いるものが思い浮かびますが、もともとは不浄を払い邪気を避けるものとして簾(すだれ)や柱にかけたり、身に帯びたものでした。沈香(じんこう)や丁子(ちょうじ)などの香りの強い植物を玉にして錦の袋に入れ、糸で飾り、表面に菖蒲や蓬などを添えて、5色の糸を長く垂らしたものを「薬玉」といいました。これを5月5日に用いたそうです。本来の意味は漢字のごとく、病を遠ざける薬の玉というわけです。
このように菖蒲を用いる「菖蒲の節句」、薬草としても鎮痛・鎮静・健胃に用いたり、浴湯料として腹痛・冷え性にも効果があるそうです。毎年、くすり博物館では、5月3日から5日までの期間にご来館された方々に、菖蒲湯のための菖蒲を1家族に1束ずつプレゼントしています。お湯に浮かべると身体の芯まで温まって、菖蒲の香りでリラックスできるのではないかしら?
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