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日本料理に添えられた葱(ネギ)や生姜(ショウガ)、山葵(ワサビ)などを、私たちは『薬味』を呼んでいます。『薬味』を加えることで、さらにお料理の風味を増したり、食欲を増進させて美味しくいただくことができます。
ところでこの『薬味』、無意識に使っていますが、薬の味と言うからには、何か薬と関係がありそうです。薬の味がするためでしょうか?それとも薬の役割を果たすのでしょうか?
もともとは、医学用語として使われていた言葉でした。中国最古(1〜2世紀)の薬の書物「神農本草経」によると、食物には五味があり、それぞれに応じた効能があるとされていました。
五味とは、甘・苦・酸・辛・鹹(塩味)のことで、甘い、苦い、酸っぱい、辛い、塩っぱいといった5つの味覚から食べ物を分類し、一人ひとりの体質や病態などに応じた取りかたが大切だと考えられていました。
そこで、この五味を『薬味』と呼ぶようになり、薬としての品質や成分の特徴が定まりました。次第に、調合薬の各成分、薬剤の種類や薬種のことを『薬味』と言うようになりました。同様にかやくごはんの『加薬』という言葉も料理用語として使われていますが、『薬味』と『加薬』どちらも、漢方医学の用語では、調合薬の各成分のことです。
食べる人の好き好きで量を加減する『薬味』の語源、食中毒や食あたりから身を守ったり、時々の気分や体調にあわせて調節ができる、体にも美味しい薬草です。
記事:内藤記念くすり博物館
野尻 佳与子 (2004年1月)
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