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小さな可憐な花を咲かせていた梅の木も、いつの間にか青葉の下に多くの実をつけていました。この季節になると店頭にはたくさんの梅やリカーが並び始めます。いよいよ梅干や梅酒を作る時期がやってきました。
梅は古くから薬用として用いられてきました。私たちにとって身近なのはやはり梅干です。食べ物の痛みやすくなるこの時期、おむすびやお弁当に、特に重宝がられる保存食です。
紫蘇の葉で色付けした梅干が庶民の生活に広まったのは、江戸時代に入ってからといわれます。紫蘇はシソ科の植物で、いわゆる赤ジソと青ジソがあり、食用、薬用によく用いられます。梅干を漬ける時、塩と赤ジソは欠かせません。
紫蘇の葉は漢方でも生薬名を紫蘇葉(しそよう)または蘇葉といい、咳を抑え、解熱、発汗などの効果のある成分を含み、香蘇散などに配合されています。
赤ジソには天然色素のアントシアニンを含んでいて、梅干に含まれるクエン酸には整腸や食欲増進、殺菌作用、疲労回復などの効果があります。梅を塩に漬けることによってアントシアニンとクエン酸が反応し、鮮やかな赤色になるだけでなく、暑くて食欲が落ちたり、体力消耗しやすいこの時期にぴったりの成分の食べ物になります。梅と紫蘇の融合はすばらしいですね。
このほかに、最近は赤ジソを使った色鮮やかなシソジュースが人気です。青梅を氷砂糖、食酢でつけた梅シロップ酢も、手軽にご家庭で作れるので試してみるのもいいですね。
記事:内藤記念くすり博物館
伊藤 恭子 (2011年6月) |
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