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ゴマの原産地はアフリカとされ、エジプトやインドでは、紀元前1100年から、食用や薬用として栽培されてきました。ゴマは一年草本で春に種をまき、秋に収穫します。熱帯から温帯で栽培され、夏の暑い盛りには釣鐘状の花をつけます。
中国では不老長寿の薬として最古の薬物書の「神農本草経」に紹介されており、ゴマの薬効は古くから認められ愛用されてきました。日本には仏教が入ってくるのと同じ6世紀頃に中国から渡来しました。ゴマの語源は、中国では西域を胡地とよび、ゴマの種子が麻の実に似ていることから胡の麻・「胡麻」という漢名が生まれたようです。
江戸時代、特に元禄年間にゴマは精力剤としてもてはやされました。漢方では切り傷、やけどに効能のある膏薬・紫雲膏を作る時にはゴマ油が使われます。その他には雨具や、髪につける油などにも用いられました。
それでは、不老長寿の薬ともいわれたゴマにはどんな成分が含まれているのでしょうか。ゴマは多量の脂肪酸、たんぱく質、炭水化物、リン、カルシウムやコレステロールをさげたりするビタミンEなどの有効成分を多く含み、栄養価が高いのです。
昔から野菜のゴマ和えやゴマ豆腐、そばやうどんのつゆに入れたり、赤飯のゴマ塩にと家庭料理で食されてきました。食べる直前にゴマを炒って擦るのがよいようです。ゴマ独特の香ばしさが一層食欲をそそります。
さて、「ごまか(胡麻化)す」という言葉がありますが、これはどんな食べ物でも、ゴマを加えるとおいしいものに化すということから、転じて「人をだます」といった意味になりました。また、江戸時代には小麦粉とゴマの焼き菓子で中は空洞になっている「胡麻胴乱」というお菓子がありました。これは「胡麻菓子」(ごまかし)ともいわれ、「ごまかし」すなわち、「見かけだけよくて内容のともなわないものをだまして人目をまぎらかすこと、また目さきばかりをつくろうこと。」という意味の語源になったという説があります。何事も外観にごまかされないようにしたいものですね。
記事:内藤記念くすり博物館
伊藤 恭子 (2011年10月) |
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