 |
おいしい天ぷら、フライ、炒め物、そしてマリネやドレッシングやトッピングソース、食用油は、私たちの豊かな食生活の中で欠かすことのできない存在です。
日本の食用油は、「アブラナ(油菜)」という名前にその特徴があるように、「アブラナ」、別名ナノハナ(菜の花)、ナタネ(菜種)をおもに使用してきました。3月から4月の田園地帯で、黄色の花を一面に咲かせ春の訪れを告げる季節の花として、日本人には馴染みの深い植物です。鑑賞用として花屋に、そして野菜として八百屋の店頭にも並びますが、その種子から食用油が抽出されます。
さらに最近は、食材や調味料の種類が増えて、イタリア料理に欠かせないオリーブ油、韓国料理や中華料理にはゴマ油というように、調理方法や嗜好によって用いる油を、使い分けるようになったため、市販されている食用油の種類も豊富です。
健康面からは、ベニバナ(紅花)から採取したサフラワー油が、動脈硬化等の予防となるリノール酸を多く含んでいることで注目されたり、オリーブ油はオレイン酸を多く含んでいるため、善玉コレステロール値を高めて悪玉コレステロール値を適量に調整するといわれて需要が伸びました。
植物油は食用だけでなく、整髪剤にツバキやビナンカズラの油を用いたり、化粧品としてヤシやオリーブなどからつくられた石鹸やクリームもあります。特殊な使い方としては、バイオリンの弦のメンテナンスに、松の油(松脂)が使われています。植物によって特徴や性質の異なる植物油が、それぞれの用途で役立っています。
記事:内藤記念くすり博物館
野尻 佳与子 (2003年3月)
|
 |
 |