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身近な生活にある薬用植物 帰化植物
 帰化植物は、外国から伝来し、野生状態になった植物のことをさします。帰化植物の歴史は、遣唐使の時代にさかのぼります。ジュズダマやトウゴマなどは大陸から入ってきたといわれています。これらの植物の多くは、もともと野菜・薬用植物・採油など栽培を目的として持ち込まれたものが多く、そこから野生化したようです。江戸時代以前に持ち込まれたものだけでも700種類以上あり、現在でもまだ増えていると思われます。
 比較的最近の帰化植物の中では、川原に繁茂するブタクサやセイタカアワダチソウのように、一時的に増え、一斉に花粉を飛ばすものは“悪役”とみなされることが多いようです。
 その一方で、オランダから荷物の詰め物としてやってきたシロツメクサは、“四つ葉のクローバー”のおかげでしょうか、歓迎されています。

 高校時代の生物の先生が、教諭の仕事のかたわら、帰化植物の調査を名古屋港でなさっていました。先生のお話では、外国から輸入品として、また荷物に紛れてやってきたものが港湾地区でまずはびこることが多いそうです。先生は休日に港へ出かけては、草むらを調べるという地道な作業をなさっていました。
 港湾以外でも、空港近辺、毛織物工場、牧場なども、飛行機や輸入物に種子が付着して到来し、広がりやすいそうです。また、宅地造成や山火事などにより、山や林が切り開かれて裸地ができると、一年草の帰化植物があっという間に繁茂してしまいます。

 いわゆる雑草というものには多年草が多く、本来あるべき自然の姿が維持されていれば、なかなか外来種が入り込みにくいとのこと。つまり、帰化植物は、自然が維持されているかどうかのバロメーターであり、普段から地域の植物について注意しておくことは大切なことといえるでしょう。また、捨て猫ならぬ、“捨て園芸植物”や、庭のハーブが“脱走”して道伝いに拡がるケースも最近では多いようです。丈夫で交配しやすい外来植物は庭に直接植えずに鉢植えにすることで、日本のもともとの植生を守り、ひいてはそれを食べ物や住処にする虫や動物たちを守っていきたいですね。

植物名※1 科名 時期※2 日本に持ち込まれた経緯※3
アサガオ ヒルガオ科    
アメリカイヌホオズキ ナス科    
アメリカネナシカズラ ヒルガオ科 戦後  
アレチウリ ウリ科 戦後  
イチビ アオイ科 古代 江戸時代、火縄などに用いたものが野生化した
ウマゴヤシ マメ科 江戸 牧草として
エビスグサ マメ科    
オオアレチノギク キク科 大正  
オオアワガエリ イネ科 明治 牧草(チモシー)として
オオアワダチソウ キク科 明治  
オオイヌノフグリ ゴマノハグサ科    
オオケタデ タデ科 江戸  
オオブタクサ キク科 戦後  
オオマツヨイグサ アカバナ科 明治  
オシロイバナ オシロイバナ科    
オランダガラシ(クレソン) アブラナ科 明治 外国人によって栽培されていたものが広がったとされる
カナリークサヨシ イネ科    
カミツレモドキ キク科    
カモガヤ イネ科 明治 牧草(オーチャードグラス)として
カラスムギ イネ科    
キキョウソウ キキョウ科    
キクイモ キク科 江戸 野菜として
クソニンジン キク科 古代  
コニシキソウ トウダイグサ科 明治  
シナガワハギ マメ科 江戸  
シュウメイギク キンポウゲ科    
ジュズダマ イネ科 古代  
ショカッサイ アブラナ科 明治 中国からの引揚者が広めた
シロツメクサ マメ科 江戸 西洋からの荷物の梱包材として
セイタカアワダチソウ キク科 戦後  
セイヨウアブラナ アブラナ科 明治  
セイヨウタンポポ キク科 明治 野菜として
セイヨウノコギリソウ キク科    
ダンドボロギク キク科    
ツルドクダミ タデ科 江戸  
トウゴマ トウダイグサ科   唐代に日本に入ったが、戦時中、機械油用に栽培が奨励されたため
ノヂシャ オミナエシ科    
ハキダメギク キク科 大正  
ハリエンジュ(ニセアカシア) マメ科 明治 庭園樹・街路樹として
ハルジオン キク科 大正  
ヒメオドリコソウ シソ科 明治  
ヒメジョオン キク科 明治  
ヒレタゴボウ アカバナ科 戦後  
ヒレハリソウ ムラサキ科    
ビロードモウズイカ ゴマノハグサ科    
ブタクサ キク科 明治  
ベニバナボロギク キク科    
ヘラオオバコ オオバコ科    
ホテイアオイ ミズアオイ科 明治  
マツヨイグサ アカバナ科 明治  
マンテマ ナデシコ科 江戸  
ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ) マメ科 大正 牧草として
ムラサキツメクサ(アカツメクサ) マメ科 明治  
メリケンカルカヤ イネ科 戦後  
ヤネタビラコ キク科 戦後  
ヨウシュチョウセンアサガオ ナス科    
ヨウシュヤマゴボウ ヤマゴボウ科 江戸  

※1 全部の帰化植物をリストアップできないので、ここでは2冊の参考文献に記載があるものを優先的に採用した。
※2・3 日本への渡来時期・持ち込まれた経緯については諸説があるものや、持ち込まれた時期と、繁茂・記録された時期にずれがある植物もある。ここでは参考文献の記載にしたがった。

<参考文献>
「帰化植物  雑草の文化史-」 カラーブックス397 長田武正・富士尭著 保育社 1977
「野に咲く花」 山渓ハンディ図鑑1 林弥栄監修 山と渓谷社 1989

記事:内藤記念くすり博物館
         稲垣  裕美 (2009年2月)
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