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秋が深まると、山には紅葉(こうよう)の季節が訪れます。童謡『紅葉(もみじ)』でも、「秋の夕日に照る山紅葉、濃いも薄いも数ある中に、松をいろどる楓や蔦は、山のふもとの裾模様・・・」と情景が歌われています。落葉樹の種類によって色の変わり具合や濃淡が異なり、特にカエデの紅葉は華やかです。
ところで、「カエデとモミジはどのように違うの?」と、ときどき話題になりますが、モミジ(紅葉、黄葉、椛)とカエデ(楓、槭樹)は同種の植物で、植物分類上はともに同じカエデ科カエデ属の樹木です。英語ではメープル、カエデ属は北半球の温帯地域を中心に約150種類、日本では26種類(諸説ある)が自生しています。日本の代用的なカエデは、イロハカエデ(イロハモミジ・タカオモミジ)やヤマモミジですが、カジカエデ(オニモミジ)やアサノハカエデ(ミヤマモミジ)のように、モミジとカエデの両方の名称を持つものも多くみられます。
カエデの由来は、葉の形が<かえるで(蛙手)>に似ていることからカエデといわれるようになりました。モミジは、紅葉するという意味の動詞<もみづ(紅葉づ)>が転じて、秋に紅葉する樹やその紅葉を<もみじ>と呼ぶようになったといわれています。
では、「どうして木の葉が色付くの?」という素朴な疑問が生じます。樹木は日光が弱くなり、気温が低くなると、葉を落とす準備のために葉と枝との間に離層(しきり)を作ります。そのため葉の部分の光合成でできた糖分は枝へ流れずに葉の中にたまっていきます。一方、気温が低くなると葉の緑色の色素(クロロフィル)が壊れてきて、その下に隠れていた黄色の色素 (カロチノイド)が表面に出てきます。イチョウ葉などはこの種類です。また葉に残った糖分が赤色の色素(アントシアン)に変わっていきます。この赤色が目立つ紅葉がカエデなどです。
黄色が多い西洋の紅葉に比べると、日本の山は複数の色が混ざったカラフルな紅葉となり、特に赤色の割合が多いといわれています。秋の陽射しに照らされる真紅色や黄金色の紅葉は、華やかで美しいがゆえに、深まっていく秋に切ない哀愁が感じられますね。
記事:内藤記念くすり博物館
野尻 佳与子 (2007年10月) |
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