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枯れはじめた秋冬の野原を散策した後、洋服に虫のような植物の果実がついてしまい、なかなか取れずに困ったことはないでしょうか?こどもの頃にはブローチ代わりにしたり、友達の洋服にくっつけるいたずらしたり、帰宅して母親に原っぱで遊んでいたことが見つかったりと、思い出深い植物です。
「ひっつきむし」あるいは「くっつきむし」の名で親しまれていますが、形やひっつく方法もさまざまで、日本では約50種類あるそうです。豆のさやのようなヌスビトハギ(盗人萩)は、洋服にひっついた果実の形をしのび足で歩いた盗人の足跡に見立てたとか、果実が追いはぎのようにひっつくことに名前が由来するそうです(その他にも諸説あり)。
指先ぐらいの大きさの卵形で果実全体にトゲがあるオナモミ(巻耳)は、最も手頃なこどもの遊び道具です。爆弾のように友達に投げつけたものがそのまま反撃に使われたりと、簡単に何度も離脱しやすい性質も好都合でした。トゲの先端がカギ状に曲がっていて繊維にからみつくようになっています。こうした仕組みがマジックテープ開発のヒントになったそうです。オナモミという名称は、「雄なもみ」で「なもみ」はひっかかるという意味の「なずむ」に由来するようです。ちなみに「雌なもみ」もありますが、こちらは粘着性のベタベタによってまとわりついて離れないそうです。(雄と雌の違いなのでしょうか・・・??)。
このようにひっつく性質は、人にとってはやっかいなものですが、植物にとっては好都合です。動き回る人や動物にひっつくことによって、果実を離れたところへ運んでもらいます。そのお蔭で、親の個体とは離れたところに種子がばらまけるというわけです。
種子を効率よく広められるように、ひっつきむしは、それぞれひっつきやすい構造を発達させてきました。その構造の部分は、植物の分類とは関係なしによく似た形状になっていたりします。逆向きのトゲがあるタイプ、先がカギ状になったトゲのあるタイプ、そして「腺毛」から「粘液」を出すなど、ひっつく方法はさまざまです。
記事:内藤記念くすり博物館
野尻 佳与子 (2009年11月) |

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