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衣類や食品を染める材料として、古くから使用されてきた薬草は少なくありません。植物染料の中には、病気やけがを治し、健康を保つためにも使われるものが多くあります。
古代、紫草は貴族が着用する”紫の衣服”の染色に使われました。紫色は日本だけでなく、エジプトやギリシャ、ローマ、中国などでも高貴な色とみなされ尊重されてきたようです。日本では外用薬として、紫根を使った紫雲膏(しうんこう)の利用が知られ、火傷(やけど)、切傷などに用いられました。
藍染はすでに古代エジプトで行なわれていたといわれています。藍の主成分であるインディゴは、鮮やかな青色が長持ちし、防虫効果もあることから広く用いられました。現在のジーンズの青色も、アメリカの開拓時代、草原をかけめぐるカウボーイたちが毒虫や毒蛇に対する予防策として、木綿のシャツやパンツに藍染をほどこしたことから始まっています。新生児の下着には皮膚病に薬効のあるウコン木綿が用いられました。薬効からも本来の染色は、身体保護のために用いられたことがうかがわれます。
薬をのむことを服薬といいますが、文字の如く古代人が病気の原因となる悪霊が体内に入り込まないように、色彩の強いもの、悪霊がいやがる臭いのきついものが利用されました。転じて、内用の場合も内服というのは、身につけて効くのと同様、口から入れれば体内に潜む病魔も逃げ出すだろうと考えられました。このように、染めることのもともとの意味に思いをはせながら、染料になる身近な植物を探してみてはいかがでしょうか?
記事:内藤記念くすり博物館
伊藤 恭子 (2003年2月)
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