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「この紋所が目に入らぬか?」というのは時代劇でもおなじみの台詞ですが、この紋所は家紋のことです。もともとは貴族や武士が自分の家の目印として用いた文様ですが、勢力を誇示したり、戦場で敵味方を区別するのに用いられるようになりました。江戸時代には商人階級や歌舞伎役者、ひいては庶民も用いるようになり、家紋の種類は、動物・天文地理・器物・建造物・文様・文字図譜など全部含めると5,000種類以上あるといわれています。
今では冠婚葬祭の時の礼服についているくらいしかお目にかかることがなくなりましたが、家紋の柄にも多くの植物が用いられています。また、例えば梅の紋といってもいろいろなバリエーションがあります。
西洋でも動物や植物を組み合わせた紋章がありますが、日本ほどバリエーションはないようです。家のしるしに植物が取り込まれているのは、日本人が古くから植物に親しみ、意匠として愛でてきたからといえるでしょう。
記事:内藤記念くすり博物館
稲垣 裕美 (2003年10月)
参考文献 |
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『家紋』 |
樋口清之監修/丹羽基二著・秋田書店・昭和48年 |
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