インドにおけるてんかん治療のアクセスプログラムLivefreeの紹介

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2018年3月27日掲載

 インドは新興国の中でも、引き続き成長を成し遂げています。経済規模は拡大した一方、過去20年間に所得格差がさらに広がりました。インドの収入ピラミッドは、貧困層、低中所得層、上流中産階級層、富裕層、超富裕層の5つに分かれています。インドの収入ピラミッドは流動性が高まっており、貧困層は継続的に縮小し、全体の所得の増加とともにピラミッドは上方に移動しています。最も大きな変化は貧困層の間で見られ、そこでは多くの割合が上方に移動して低中所得層になっています。このような変化は、低中所得層、上流中産階級層でも見られます。
このような所得構造の変化をとらえ、Eisai Pharmaceuticals India Pvt. Ltd.(エーザイ・インド)は、インドの収入ピラミッドを考慮し、人々の「購入可能な価格」の懸念に対処するため、抗てんかん薬ゾネグラン(Zonegran、一般名:zonisamide)に対して、特別な患者様アクセスプログラム「Livefree」を開発しました。

 てんかんは世界的に最も多く見られる神経疾患の一つであり、てんかん患者様の約80%が中低所得国に住んでいます。世界保健機関(World Health Organization、WHO)によると、それらの患者様のうち、約75%以上の患者様が必要とする治療を受けられず、DALY(disability-adjusted life year, 障害調節生命年)1が高くなっている理由となっています。インドでは、全人口の約1%を占める約1200万人の患者様がてんかんに苦しんでいます。また、インドのてんかん治療は地域によって大きなギャップがあります。例えば、農村部の患者様のほぼ90%がてんかん治療にアクセスできていないが、都市部では、その値は26%だと推定されています2


 過去10年間にインドにおいておよそ500種類の抗てんかん薬が発売されましたが、40%以上の患者様では既存薬剤を投薬しても効果が見られず、これはてんかん治療の大きな課題となっています。その他にも、二つ大きなチャレンジが存在しています。一つは、てんかん疾患支援プログラムが少ないため、多くの患者様が経済的な理由で診断が受けられず、基本的な脳波検査(EEG:electroencephalogram)さえ受けることができません。もう一つの課題は、服薬遵守(コンプライアンス)であり、例えば患者様が医師の指導なしに自ら治療を中止すること等があげられます。コンプライアンスが守られないのは、以下の理由によると考えられます:

  • ●治療費用
  • ●疾患に対する認識の不足
  • ●抗てんかん薬の副作用
  • ●治療期間およびそれに関する認識のずれ
  • ●抗てんかん薬による効果の個人差

 

 インドの多くの研究では、治療のコストがコンプライアンスを守らない最大の理由であると報告しています3。インドは、80%以上の患者様が健康保険に加入しておらず、治療費用を自己負担しなければなりません。患者様は長期の治療費用を負担できず、しばしば治療から離脱してしまいます。

 

「Livefree」構想

 さまざまなステークホルダーが、てんかん患者様向けの疾患に対する意識向上や疾患啓発活動に力を入れていますが、もっとも大きな課題である治療費用の不安解消に対して、インドの患者様を支援するプログラムはありませんでした。

 
 Livefreeプログラムは、当社のhhchuman health care,ヒューマン・ヘルスケア)理念に基づいて、抗てんかん薬における治療コンプライアンスを改善することをめざし、てんかんの長期治療を継続するための経済的な支援を必要とする患者様のために設計されたものであり、インドの中枢神経治療領域において、ユニークな患者様支援プログラムです。
このプログラムは「ゾネグラン」を処方されたてんかん患者様のために、2017年に開始され、以下の三つの要素を含みます。

  • ●費用補助:経済的支援を必要としている患者様の治療費を補助し、治療が継続できるようにサポートします。
    ●治療モニタリング:必要に応じて無償で脳波検査を提供します。
    ●疾患管理:さまざまなサポートやツールを提供することによって、てんかんに対する認識を高め、コンプライアンスを改善します。

インドのクリニックでのLivefreeポスター

 エーザイ・インドは、今後より多くの患者様にLivefreeを提供し、さらに多くのソリューションを開発しながら、医薬品アクセス改善に向けた取り組みを積極的に展開してまいります。

 

1 DALY (disability-adjusted life year, 障害調節生命年): 一つのDALYは、失われた「健康な」一年を意味しており、人口全体のDALY総数(疾病負荷)は、現在の健康状態と理想な健康状態とのギャップの測定値を意味します(出典:WHO)。
2 Global disparities in the epilepsy treatment gap: a systematic review. 2010, Bull World Health Organization.
3 Das K et al Evaluation of Socio-economic factors causing discontinuation of epilepsy treatment resulting in seizure recurrence: a study in an urban epilepsy clinic in India; Seizure. 2007 Oct; 16(7):601-7)