「新しい答え」への挑戦 #04
CJ部 部長
hhcホットライン(くすり相談窓口)責任者
牧 礼子
2003年に入社。研修担当・がん領域に携わった後、現職へ。「当事者様やご家族の豊かな生活を支えるために、常に一歩踏み出す」をモットーに、エーザイに直接届くお問い合わせへの対応に加え、顧客の声を社内全体に届ける活動を行っている。
エーザイの「hhcホットライン」は、医療関係者をはじめ、当事者様やご家族からのお問い合わせに直接お答えする部署。このhhcホットラインから、どんな「新しい答え」が生まれているのか。最前線で部署を統括する牧礼子からは、思わぬ答えが返ってきました。
01
hhcホットラインだから出せる「新しい答え」とは。
牧さんはどのように考えていますか?
「hhcホットライン」は、医療関係者や当事者様、ご家族から様々なお問い合わせを一番最初に受け取る場所です。ご相談に合わせた情報を提供するだけでなく、寄せられた声をエーザイ社内に共有する役割も担っています。だからこそ私たちは、「新しい答え」を率先して出すというより、「新しい問い」を見つけ、適切な部門に伝える仕事なんです。
特に認知症の当事者様やご家族は、漠然とした不安を抱えて孤独になってしまう方が多いと感じています。ある時、「エーザイが開発した新しいアルツハイマー病治療薬の投薬を勧められたものの、脳の腫れや出血などの副作用があると聞いて不安です。どうしたらよいのでしょうか」という当事者様の奥様からお問い合わせがありました。
「苦しい思いをしてまでこの治療を受けさせるべきなのかわからない。でも時間が経つと投薬できないかもしれないと言われ、焦っている」と相談してくださって。このとき、薬があるからこそ生まれる葛藤もあると気づきました。ご自身やご家族の人生を考えたときに、負のスパイラルに陥らないようにするための「新しい答え」が求められているのではないか。この声はエーザイ全社員が閲覧できるwebページでリアルな声を共有するとともに、気づきの共有も行っています。
02
相談窓口を365日、1日も休まず開き続けることは、製薬業界ではかなり珍しいと伺いました。
どのような理由があるのでしょうか?
私たちは、病気をなくすこともできない。治すこともできない。それでも、気持ちが少しでも前を向けるように、少しでも不安を取り除きたいのです。病院や薬局にも、休みがあります。でも、病気自体や当事者様やご家族の不安な気持ちに、休みはありません。そんな中で、いつでも、困っていることを聞ける、話せる場所があれば、不安な気持ちを和らげることができるかもしれない。そのような想いで、お問い合わせに365日対応しています。メンバーも当事者様・ご家族の声を聴くことができる唯一の組織にいるという使命感と誇りを持って対応してくれています。
当事者様からのお問い合わせについて、本来であれば、お医者様と当事者様・ご家族間のコミュニケーションだけで治療内容を理解できることが理想です。しかし、心配や不安が多く、緊張してしまうのが病院。限られた時間の中でのやりとりでは、すべてを理解することはなかなか難しい。
だからこそ、「hhcホットライン」が必要だと考えています。私たちの役割は、皆様が納得して決断するための材料(情報)を十分に提供すること。当事者様も医療関係者も納得して治療する、しないの選択をできるよう、お支えすること。「私たちの情報提供によって治療が変わる」という責任と覚悟をもってお問い合わせ対応に臨むようメンバーに伝えています。
アルツハイマー病の新しい治療薬のように、薬効の説明が難しい場合もありそうです。
アルツハイマー病治療薬は、疾患の進行を遅らせるという効果が期待できますが、「傷口が治る」ような目に見える回復があるわけではないので、当事者様もご家族も理解しにくいのだと思います。
だからこそ、どうすればこの新しいアルツハイマー病治療薬について正しく、わかりやすく伝えられるか。CJ部全員で研修を行い、知識を身につけていくことはもちろん、考える時間を十分にとってお互いに伝え方の工夫に関するアイデアを出し合う活動もしています。
03
ここまでお話を伺い、牧さんご自身に当事者様に寄り添う気持ちが強いと感じました。
入社当時から変わらない想いなのでしょうか?
私の根底にあるのは「医療に貢献したい」という想いです。私自身MR(医薬情報担当者)の募集で採用試験を受けたのですが、エーザイの採用の最終面接で「薬の営業職であっても、いちばんの仕事は患者様への貢献。それができますか?」と聞かれたことが入社した決定的な理由でもあります。他の製薬会社は順番が逆でした。
医療に貢献するために、私たちはエーザイの製品はもちろん、他社製品や薬剤以外の治療方法についても勉強していないと医療現場や当事者様、ご家族、生活者の皆様からのニーズに応えられない、これはがん領域での学びでした。
エーザイ製品を通じて、本当の意味で「医療」に貢献するためには、疫学・診断・治療(副作用)・緩和ケアなど、疾患全体像を理解したうえで、いつエーザイの製品が当事者様のお役に立てるのか考え、提案することが重要と考えています。この理念を、ずっと心に刻みながら、日々業務に臨んでいます。
hhcホットラインのみなさんが、現在挑戦している
「新しい答え」についておしえてください。
私たちが共有する声から、エーザイの「新しい答え」が生まれていく。だからこそできるだけ多くの声から課題を抽出し、適切な部署とつなぐことが何より大切です。最近は、寄せられたお問い合わせを緻密に分析し、より効率的にみなさんの悩みや製品の課題点を抽出する試みをしています。これからはもっと多くの課題を各部署とつなぐことができるでしょう。私たちの情報提供によって、当事者様の治療が変わるかもしれない。そんな存在意義を肝に銘じ、当事者の皆様や生活者の皆様に寄り添う製品・ソリューション開発につなげるために、もっと多くの声を社内に届けていきたいです。
「新しい問い」から「新しい答え」が生まれた先に、どのような社会が広がっていると思いますか?
「認知症が怖くない」社会をつくりたいと考えています。認知症という病気は知っているけど、身近に当事者様がいないと実感がわきづらい、という方もまだまだいらっしゃると思います。少しでも多くの方にわかりやすく、正しい情報を伝え、当事者様やご家族の想いを社内外のパートナーたちに届けていく。認知症への理解が進むことで、早い段階からできる準備が増えると思うんです。
そのために、新しい「hhcホットライン」の連携の仕方も模索したいと思います。今後はエーザイ社内だけではなく、社外のパートナーの方と当事者様をつなぐ“ハブ”のような存在になれたら、と考えています。エーザイには「認知症エコシステム」という様々なパートナーとともに認知症に対する新しい解決策を作っていく取り組みがあります。そうした場でも当事者様やご家族の生の声は非常に大切だと思うので、幅広い領域の方々と協力してサポート体制を強化していきたいですね。