抗がん剤「ハラヴェン®」が中国の乳がんを対象とした臨床第Ⅲ相試験において無増悪生存期間をビノレルビンと比較して統計学的に有意に延長

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗がん剤エリブリンメシル酸塩(以下 エリブリン、製品名:「ハラヴェン®」)に関して、中国における局所再発性または転移性乳がん患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(304試験)において、対照薬であるビノレルビン投与群と比較して主要評価項目である無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を統計学的に有意に延長したことをお知らせします。

中国で実施した304試験は、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む2から5レジメンの化学療法による前治療歴を有する局所再発性または転移性乳がんの患者様530人を対象とした、エリブリンとビノレルビンの有効性および安全性を評価する、多施設共同、非盲検、無作為化、並行群間試験です。本試験では、主要評価項目としてPFSを両群で評価しました。なお、本試験のエリブリン投与群において高頻度で確認された有害事象は、好中球減少、貧血、発熱、疲労・無力症であり、これまでにエリブリンの投与で認められた安全性プロファイルと同様でした。なお、本試験の詳細な結果については今後、学会等で発表する予定です。

当社は、本試験結果に基づき、2016年度上期中に中国当局への本剤の新薬承認申請を行う予定です。

近年、中国では乳がんと診断される女性が増加しており1、2015年には272,400人の女性が新たに乳がんと診断され、70,700人の患者様が亡くなったと推定されています2。新たに診断された女性のがんのうち、最も多いのが乳がんといわれています1

「ハラヴェン」は、ハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。従来の作用機序に加えて、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること3、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移能を減少させること4など、ユニークな作用を有することが報告されています。本剤は、乳がんに係る適応で、2010年11月に米国で最初に承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジアなど、約60カ国で承認を取得しています。

当社は、「ハラヴェン」の臨床的価値を高めることで、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 「ハラヴェン」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について

「ハラヴェン」は、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出された天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物であり、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制することで、細胞分裂の停止作用を有しています。加えて、最近の非臨床研究において、腫瘍の血流循環を改善すること3、乳がん細胞の上皮細胞化を誘導すること、乳がん細胞の転移能を減少させる4など、ユニークな作用を有することが知られています。

本剤は、2010年11月に米国で「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種のがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」の適応で最初の承認を取得し、これまでに日本、欧州、米州、アジアなど約60カ国で乳がんに係る適応で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月に発売しました。また、欧州やアジアなどでは「1レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」での適応拡大の承認を取得しています。

悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に米国において「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある手術不能または転移性の脂肪肉腫」、2016年2月に日本において「悪性軟部腫瘍」、2016年5月に欧州(EU)において「進行または転移性で、アントラサイクリン系抗がん剤治療(不適な場合を除く)を含む化学療法の前治療歴のある手術不能な成人の脂肪肉腫」の適応で、それぞれ承認を取得しています。また、スイス、ロシア、オーストラリア、ブラジル、マレーシアおよびフィリピンなどで申請中です。本剤は、米国および日本において、悪性軟部腫瘍に対する希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. 304試験について

中国で実施した臨床第Ⅲ相試験(304試験)は、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む2から5レジメンの化学療法による前治療歴を有する、局所再発性または転移性乳がんの患者様530人を対象とした、エリブリンとビノレルビンの有効性および安全性を評価する、多施設共同、非盲検、無作為化、並行群間試験です。エリブリンは、21日を1クールとして、1.4mg/m2/dayを1日目と8日目に静脈内注射により投与され、ビノレルビンは、21日を1クールとして、25mg/m2/dayを1日目、8日目と15日目に静脈内注射により投与されました。

エリブリン投与群は、ビノレルビン投与群と比較して、主要評価項目である、無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)を統計学的に有意に延長しました。副次評価項目は、全生存期間(OS:overall survival)と奏効率(ORR:objective response rates)が設定されました。

本試験において、エリブリン投与群において高頻度で確認された有害事象は、好中球減少、貧血、発熱、疲労・無力症で、これまでのエリブリン投与で確認された安全性プロファイルと同様でした。

なお、本試験の詳細な結果については今後、学会等で発表する予定です。

  • 1
    Lei F et al. Breast cancer in China. The Lancet Oncology, 2014; 15(7), e279-e289
  • 2
    Chen W et al. Cancer Statistics in China, 2015. CA CANCER J CLIN, 2016; 66, 115-132
  • 3
    Funahashi Y et al. Eribulin mesylate reduces tumor microenvironment abnormality by vascular remodeling in preclinical human breast cancer models. Cancer Sci., 2014; 105, 1334-1342
  • 4
    Yoshida T et al. Eribulin mesilate suppresses experimental metastasis of breast cancer cells by reversing phenotype from epithelial-mesenchymal transition (EMT) to mesenchymal-epithelial transition (MET) states. Br J Cancer, 2014; 110, 1497-1505