抗悪性腫瘍剤「ギリアデル®脳内留置用剤7.7mg」の承認条件(全例調査)解除について

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗悪性腫瘍剤「ギリアデル®脳内留置用剤7.7mg」(一般名:カルムスチン)について、本剤の承認条件となっていた全例調査に関し、厚生労働省から解除の通達を受けましたのでお知らせします。

本剤は、2012年9月に悪性神経膠腫を効能・効果として承認され、その際の承認条件として「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」が付されていました。今回の承認条件解除は、当社が厚生労働省に提出した安全性および有効性データ(安全性解析対象症例558例、有効性解析対象症例536例)に基づいて、本承認条件を満たすと判断されたことによるものです。

本剤は、ニトロソウレア系アルキル化剤であるカルムスチンを生体内分解性のポリマー基剤に含有した国内で唯一の脳内留置用の徐放性製剤です。悪性神経膠腫の切除術後の残存腫瘍近辺に、本剤を留置することにより、術直後から腫瘍細胞に直接、高濃度の抗悪性腫瘍剤を一定期間にわたり効率よく曝露させるため、術後療法(放射線療法、化学療法など)開始までの治療空白期を埋めることができます。本剤は、当社が製造販売し、当社とノーベルファーマ株式会社が共同プロモーションを行っています。

当社は、引き続き本剤の適正使用の推進、情報提供に努め、患者様とそのご家族のベネフィット向上に、より一層の貢献をしてまいります。

以上

<参考資料>

1. 「ギリアデル脳内留置用剤 7.7mg」について

本剤は、ニトロソウレア系アルキル化剤であるカルムスチンを生体内分解性のポリマー基剤に含有した、国内で唯一の脳内留置用の徐放性製剤です。悪性神経膠腫の切除術後の残存腫瘍近辺に、本剤を留置することにより、術直後から腫瘍細胞に直接、高濃度の抗悪性腫瘍剤を一定期間にわたり効率よく曝露させるため、術後療法(放射線療法、化学療法など)開始までの治療空白期を埋めることができ、残存腫瘍縮小や増殖抑制効果を発揮することが期待できます。

2. 神経膠腫(しんけいこうしゅ)について

神経膠腫は、脳腫瘍のうち、脳実質内に存在するグリア細胞由来の原発性腫瘍の総称で、その多くは予後不良な悪性の腫瘍です。神経膠腫は原発性脳腫瘍の約30%を占め、多くは脳内・脊髄内に拡がって発育(浸潤)することが特徴で、腫瘍の境界が不鮮明であり、周辺部では正常脳組織と腫瘍細胞が混在し手術による全摘出が困難であるため、悪性の神経膠腫の5年生存率は25%以下と予後不良の腫瘍です。

神経膠腫の標準的治療として、通常、外科的手術(開頭手術)が行われ、多くの場合、術後に放射線治療や化学療法が行われます。しかし、化学療法剤の全身投与では、血液脳関門により有効成分が腫瘍部位において有効濃度まで十分に到達しない一方、全身的副作用のため十分量の化学療法剤を投与できないことが悪性神経膠腫の予後が悪い理由のひとつに挙げられます。

3. 全例調査結果について

安全性については、解析対象症例558例において、199例365件の副作用が収集され、副作用発現症例率は35.7%でした(国内第I/Ⅱ相試験での副作用発現症例率は54.2%)。365件の副作用のうち、10件以上認められた副作用は、「脳浮腫」124例124件(22.2%)、「痙攣」43例43件(7.7%)、「発熱」21例21件(3.8%)、「片麻痺」17例17件(3.0%)、「治癒不良」14例14件(2.5%)、「てんかん」11例11件(2.0%)でした。また、365件の副作用のうち、Grade 3以上の副作用は138件であり、このうち5件以上認められたものは「脳浮腫」38件、「治癒不良」12件、「痙攣」9件、「水頭症」7件、「髄膜炎」、「片麻痺」各6件、「てんかん」5件でした。

有効性については、解析対象症例536例におけるカプランマイヤー法による本剤留置後1年の生存率の推定値は72.5%であり、初発・再発別の同生存率の推定値は、初発症例が79.1%、再発症例が61.6%でした。本調査で得られた有効性は、初発悪性神経膠腫および再発悪性神経膠腫の各群において、承認時までの情報と比較して大きく劣ることはないと考えられました。