自社創製の抗てんかん剤「ペランパネル」日本においててんかんの部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で新薬承認申請

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、自社創製の抗てんかん剤「ペランパネル水和物」(一般名、以下「ペランパネル」、海外製品名「Fycompa®」)について、てんかん患者様の部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で、新薬承認申請を行いましたのでお知らせします。

本申請においては、審査期間短縮に向けて医薬品事前評価相談制度を活用しています。既に欧米における部分てんかんに対する臨床試験結果を含む申請パッケージの一部を提出済みです。今回、日本を含むアジアにおける部分てんかんに対する臨床試験結果(335試験)、およびグローバルでの全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC)に対する臨床試験結果(332試験1)を追加し、申請を行いました。

335試験は、難治性の部分発作を有する12歳以上のてんかん患者様を対象とした、他剤併用時におけるペランパネルの有効性および安全性を評価するプラセボ対照臨床第Ⅲ相試験です。335試験の主要評価項目である発作頻度変化率において、ペランパネル8mg群および12mg群は、プラセボ群と比較して統計学的に有意な減少を示しました。

332試験は、12歳以上のPGTC患者様を対象とした、他剤併用時におけるペランパネルの有効性および安全性を評価するプラセボ対照臨床第Ⅲ相試験です。332試験の主要評価項目であるPGTC発作頻度変化率において、ペランパネル群はプラセボ群に比較して統計学的に有意な減少を示し、さらにペランパネル群では、30.9%の患者様において、治療維持期13週間にわたりPGTC無発作状態が維持されました(プラセボ群では12.3%)。

なお、335試験及び332試験において認められた主な有害事象は、浮動性めまい、疲労、頭痛、傾眠、易刺激性でした。

ペランパネルは、自社創製のファースト・イン・クラスの抗てんかん剤であり、1日1回経口投与する錠剤です。本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を高選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制します。12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法を適応として、欧米など45カ国以上で承認を取得し、25カ国以上で「Fycompa」の製品名で販売されています。また、12歳以上のPGTC発作に対する併用療法についても、2015年6月に米国および欧州で適応拡大の承認を取得しました。

日本におけるてんかん患者様数は約100万人と報告されています。てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約4割を占める全般てんかんに大別されます。また、PGTCは全般てんかんにおける最も重篤な発作型の一つであり、全般てんかんの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます2

てんかんは、患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず3、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。また、今回申請した適応症の一部である強直間代発作は、突然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その発作頻度は「てんかん患者様の予期せぬ突然死(SUDEP: Sudden Unexpected Death in Epilepsy)」の最も重要な危険因子とされ4、てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、ペランパネルをはじめ本領域での複数の治療オプションを提供することにより、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に引き続き貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 「ペランパネル水和物」(一般名、以下「ペランパネル」、海外製品名「Fycompa®」)について

ペランパネルは、当社が創製したファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。

本剤は1日1回経口投与する錠剤です。12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む、Partial-onset seizures (with or without secondarily generalized seizures))に対する併用療法を適応として、45カ国以上で承認を取得し、25カ国以上で販売されています。

12歳以上の全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC(Primary Generalized Tonic Clonic) seizures)に対する併用療法については、2014年8月に欧米で適応拡大申請を行い、2015年6月に米国および欧州で承認を取得しました。日本では、このたび、主に335試験と332試験の結果に基づき、難治性の部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で新薬承認申請を行いました。

さらに、欧米にて懸濁液の剤型追加の承認申請を2015年6月に行いました。加えて、部分てんかんの小児患者様を対象に欧米で臨床第Ⅱ相試験を実施しています。

2. 335試験の概要

※左右にスクロールできます

試験名称 難治性の部分発作を有するてんかん患者様を対象とした他剤併用時におけるペランパネルの有効性及び安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
対象 1∼3種類の抗てんかん剤治療を受けている部分発作を有する12歳以上の患者様710名
投与法 ペランパネル 4mg/日、8mg/日、12mg/日、またはプラセボを1日1回就寝前に経口投与
治療期間 観察期 6週間
治療期(治療漸増期6週間及び治療維持期13週間) 19週間
継続投与期 10週間以上
実施地域 日本、中国、韓国、オーストラリア、タイ、マレーシア、台湾
主要評価項目 発作頻度変化率: 28日間あたりの発作頻度の観察期からの変化率
結果 発作頻度変化率において、ペランパネル8mg群および12mg群は、プラセボ群と比較して統計学的に有意な減少を示しました。
主な有害事象 ペランパネル群で10%より発生頻度が高く、かつプラセボ群より発生頻度が高い主な有害事象は、浮動性めまい、傾眠でした。

(詳細な試験結果は、今後学会にて発表する予定です)

3. 332試験の概要1

※左右にスクロールできます

試験名称 強直間代発作を有する全般てんかん(PGTC)患者様を対象として、他剤併用時におけるペランパネルの有効性及び安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
対象 1∼3種類の抗てんかん剤治療を受けているPGTCを有する12歳以上の患者様164名
投与法 プラセボ対照、ペランパネルを1日1回経口投与、治療漸増期に8mg/日まで漸増し、治療維持期に8mg/日投与
治療期間 観察期(スクリーニング期及び観察期) 最長12週間
治療期(治療漸増期4週間及び治療維持期13週間) 17週間
継続投与期 38週間以上
実施地域 米国、欧州、日本、アジア
主要評価項目 PGTC発作頻度変化率(28日間あたりのPGTC発作頻度の観察期からの変化率)
結果
  • PGTC発作頻度変化率は、ペランパネル群で76.5%となり、プラセボ群における38.4%との比較で統計学的に有意な減少を示しました(p<0.0001)
  • PGTC発作頻度50%減少達成率(28日間あたりのPGTC発作頻度が観察期に比較して50%以上減少した被験者の割合)は、ペランパネル群は64.2%であり、プラセボ群の39.5%と比較して統計学的に有意な改善を示しました(p=0.0019)
  • ペランパネル群では、30.9%の患者様が治療維持期13週間にわたりPGTC発作について無発作の状態が維持されました(プラセボ群では12.3%)
主な有害事象 ペランパネル群で10%より発生頻度が高く、かつプラセボ群より発生頻度が高い主な有害事象は、浮動性めまい(ペランパネル群 vs プラセボ群 = 32.1% vs 6.1%)、疲労(同 14.8% vs 6.1%)、頭痛(同 12.3% vs 9.8%)、傾眠(同 11.1% vs 3.7%)、易刺激性(同 11.1% vs 2.4%)でした。

4. てんかんについて

てんかんの患者様数は、日本が約100万人、米国が約290万人、欧州が約600万人、世界中で約6,000万人と報告されています。てんかん患者様の約30%が既存の抗てんかん剤では発作を十分にコントロールできておらず3、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。

てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。部分てんかんの発作では、脳の電気信号の異常が一部分に限定されています。部分発作の中には、異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になるものもあります(二次性全般化発作)。全般てんかんの発作では、電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から意識がなくなったり、全身に症状が現れたりします。

全般てんかん患者様の強直間代発作(PGTC)は全般てんかんにおける最も一般的かつ重篤な発作型の一つであり、全般てんかんの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます2

5. 強直間代発作について

部分てんかん(二次性全般化発作)と全般てんかんの患者様における強直間代発作は、突然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その発作頻度は「てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP: Sudden Unexpected Death in Epilepsy)」の最も重要な危険因子とされ4、 てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。強直間代発作は、多くの患者様でなんら予告症状なしに意識喪失を生じ、急激な強直性筋収縮による転倒に次いで、間代性けいれんを経て、筋弛緩し、意識障害に至る重篤な経過をたどることから、日常生活上の支障が大きいことが知られています。発作は数分で治まり、しばらく意識不鮮明やもうろう状態あるいは睡眠に移行した後、正常に戻るのが一般的な経過です。

6. 医薬品事前評価相談制度について

独立行政法人医薬品医療機器総合機構において、申請前の開発段階から品質、非臨床、臨床に関する提出可能なデータに基づく事前評価を行い、申請前に課題等の抽出及び解決を促すことにより、結果として審査期間を短縮することを目的とする制度です。

  • 1

    French JA, et al. “Adjunctive Perampanel for Treatment of Drug-Resistant Primary Generalized Tonic-Clonic Seizures in Patients with Idiopathic Generalized Epilepsy: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Phase Ⅲ Trial.” Abstract. 68th American Epilepsy Society (AES) Annual Meeting, 2014; 2.389

  • 2

    Hauser WA, et al. Epilepsia, 34(3):453-468,1993

  • 3

    “The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research. What are the epilepsies?” National Institute of Neurological Disorders and Stroke, accessed June 19, 2015,
    http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#230253109

  • 4

    Shorvon S, Tomson T. “Sudden unexpected death in epilepsy.” Lancet, 2011; 378:2028-2038