ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®」の「強直性脊椎炎」に関する承認条件(全例調査)の解除について

アッヴィ合同会社
エーザイ株式会社

アッヴィ合同会社(本社:東京都、社長:エステバン・プラータ、以下 アッヴィ)とエーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)は、このたび、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ®皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ<遺伝子組換え>、以下「ヒュミラ®」)について、強直性脊椎炎に係る効能・効果の承認条件となっていた特定使用成績調査(全例調査)に関し、厚生労働省から解除の通達を受けたと発表しました。

「ヒュミラ®」は、2010年10月に「強直性脊椎炎」に係る効能・効果が承認されました。その際の承認条件として、「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」が付されていました。

今回の承認条件の解除は、厚生労働省に提出した127人の強直性脊椎炎患者さんでの全例調査中間報告書をもとに、「ヒュミラ®」の承認条件の内容である本剤の安全性及び有効性に関するデータの早期収集、本剤の適正使用に必要な措置を講じること、について審査された結果に基づき、決定・通知されたものです。なお解析結果は、これまでに確立された「ヒュミラ®」の安全性および有効性を支持するものでした。

「ヒュミラ®」の臨床研究は広範に行われ、豊富なデータを有しております。日本において「ヒュミラ®」は、アッヴィが製造販売承認を取得し、アッヴィとエーザイによる1ブランド1チャネル2プロモーション方式で共同プロモーションを行っており、販売はエーザイが担当しています。

両社は、引き続き本剤の適正使用の推進、情報提供に努め、患者さんのQOL向上に貢献してまいります。

以上

本件に関する問合せ先

<参考資料>

1. 特定使用成績調査*の解析結果

厚生労働省に提出した本調査結果は、2010年10月27日から2013年3月15日までに収集し、解析対象とした127人の患者さんのデータについて解析を行ったものです。

副作用発現率は27.6% (35/127例)であり、主な副作用は「発疹」「胃腸炎」「鼻咽頭炎」「肝機能異常」でした。また、重篤な副作用発現率は3.9%(5/127例)であり、「皮膚線維肉腫」「アナフィラキシーショック」「穿孔性胃潰瘍」「痔核」「ループス様症候群」が各1例でした。全例とも、転帰は「回復」または「軽快」でした。

有効性の評価は、強直性脊椎炎の疾患活動性指標であるBath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index (BASDAI)及び全般改善度について行いました。投与開始前と投与24週時にBASDAIの評価が行われた症例のBASDAI50反応率(BASDAIの値が投与開始前から50%以上改善した症例の割合)は24週時50.0%(25/50例)でした。医師の主観的評価である全般改善度は、24週時で著効38.8%(38/98例)、著効+有効91.8%(90/98例)でした。既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎患者さんにおいて、本剤投与による症状の改善が確認されました。

  • *
    特定使用成績調査は、使用成績調査に含まれる調査です。用語解説5)を参照。

2. 用語解説

1)強直性脊椎炎

強直性脊椎炎は、頸部から腰背部や臀部、時に手足の関節の痛みやこわばりで始まり、これらの部位が固まって次第に動かなくなる全身性の慢性炎症性疾患で、国の難病に指定されている疾患です。稀に脊椎や関節の骨性強直や変形を生じる重症例もみられます。好発年齢は10∼20代であり、若年の男性で多く発症し、その多くは数十年という長い慢性の経過をとります。原因は未だ明らかとなっておりませんが、遺伝的な要因が関与していると考えられています。有病率は欧米人(0.9%)に比べて日本人(0.0065%)では低く、国内では稀な疾患と考えられています。

診断は、強直性脊椎炎に特徴的な臨床症状と仙腸関節のX線画像に基づきますが、発症早期での診断が難しく、強直性脊椎炎と診断されるまで平均10年程度の時間が経過することが課題として指摘されています。

治療は、運動療法や非ステイロイド性消炎鎮痛剤による治療が中心ですが、炎症が生じている仙腸関節などの部位では炎症性サイトカインであるTNFαの濃度の上昇が認められているので、このTNFαを中和することで炎症を改善することができると考えられます。

2)TNFα

TNF(腫瘍壊死因子:Tumor Necrosis Factor)とは、腫瘍細胞に対する傷害活性を有する因子として発見された細胞間相互作用を媒介するタンパク質(サイトカイン)の一つです。

TNFαは、マクロファージ、リンパ球、血管内皮細胞などの種々の細胞によって産生され、炎症反応を惹き起こしたり、増強したり、炎症細胞を活性化したりします。一部の免疫疾患で過剰に産生され、炎症反応の中心的な役割を果たしている物質です。

3)モノクローナル抗体

単一株(モノクローン)の抗体産生細胞から得られた抗体で、抗原に対する結合親和性や特異性が均一の抗体です。

4)使用成績調査

使用成績調査は、厚生労働省令(GPSP省令)で以下のとおり、定義されています。

「製造販売後調査等のうち、製造販売業者等が、診療において、医薬品を使用する患者の条件を定めることなく、副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査をいう。」

5)特定使用成績調査

特定使用成績調査とは、使用成績調査の一部であり、厚生労働省令(GPSP省令)で以下のとおり、定義されています。なお、今回の承認解除となった全例調査は特定使用成績調査です。
「使用成績調査のうち、製造販売業者等が、診療において、小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者、医薬品を長期に使用する患者その他医薬品を使用する条件が定められた患者における副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査をいう。」

6)BASDAI (Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)

強直性脊椎炎の疾患活動性指標です。過去1週間の下記6項目を、患者さんが問診票上で主観的にVAS*で評価した活動性指数です。(各項目0∼10点)

①疲労の程度、②頸部、背中や腰臀部の疼痛、③頸部、背中や腰臀部以外の関節の疼痛/腫脹、
④圧痛点の不快さ、⑤朝のこわばりの強さの程度、⑥朝のこわばりの持続時間
BASDAI=0.2[①+②+③+④+0.5(⑤+⑥)]
BASDAI 50とは、BASDAIの合計点数がベースライン時の点数に比較し50%以上改善した場合をさす。

  • *
    VAS(Visual Analog Scale):視覚的評価スケールで、「0」を「痛みはない」状態、「100」を「これ以上の痛みはないくらい痛い(これまで経験した一番強い痛み)」状態として、現在の痛みが10cmの直線上のどの位置にあるかを示す方法です。

3. 「ヒュミラ®」について

「ヒュミラ®」は、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤です。日本において「関節リウマチ (関節の構造的損傷の防止を含む)、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬・関節症性乾癬・強直性脊椎炎・多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎・腸管型ベーチェット病・中等症又は重症の活動期にあるクローン病の寛解導入及び維持療法・中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療」に係る効能・効果の承認を取得しています。

4. アッヴィについて

アッヴィは、アボットラボラトリーズからの分社を経て2013年に設立された、研究開発型のグローバルなバイオ医薬品企業です。専門知識や献身的な社員・イノベーション実現に向けた独自の手法を通じて、世界で最も複雑かつ深刻な疾患領域における先進的な治療薬を開発・提供することをミッションに掲げています。アッヴィは、100%子会社のファーマサイクリックス社を含めて世界で28,000人以上を雇用し、170カ国以上で医薬品を販売しています。当社の概要や人材・製品群・コミットメントに関する詳細はwww.abbvie.comをご覧ください。よろしければTwitterアカウント@AbbVieもフォローください。また、人材情報はFacebookやLinkedInページをご参照ください。

日本においては、アッヴィ合同会社の約800人の社員が、医療用医薬品の研究・開発や販売に従事しています。自己免疫疾患・新生児・肝疾患・ニューロサイエンスの各領域を中心に、患者さんの生活に大きく貢献できることを願っています。詳しくは、www.abbvie.co.jpをご覧ください。

5.エーザイについて

エーザイ株式会社は、本社を日本に置く研究開発型グローバル製薬企業です。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、世界で1万人を超える社員がアンメットメディカルニーズの高い疾患領域において革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jp別ウィンドウで開きますをご覧ください。