抗がん剤「Lenvima™」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)米国FDAより放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんの適応で承認取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、米国子会社であるエーザイ・インクが、自社創製の新規抗がん剤「Lenvima™」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応で、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)より承認を取得したことをお知らせします。本剤は優先審査品目に指定されていましたが、優先審査終了目標日より約2カ月早い迅速な承認となりました。なお、このたびの米国での承認が本剤に関する世界で初めての承認となります。

「Lenvima」は、血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な分子標的治療薬であり、特に甲状腺がんの増殖、腫瘍血管新生に関与するVEGFR、FGFRおよびRETを同時に阻害します。また、本剤は、VEGFR2とのX線結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された最初の薬剤であり、速度論的解析からは、素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています1

今回の承認は、392人の進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんの患者様を対象とした多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験(SELECT試験)の結果に基づいています。本試験において、「Lenvima」投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間 (progression free survival: PFS)を統計学的に有意に延長しました(p<0.001、「Lenvima」18.3カ月 vs プラセボ3.6カ月(中央値)、ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31))。また、「Lenvima」は、プラセボに対して統計学的に有意に高い奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)を示しました(p<0.001、「Lenvima」64.8% vs プラセボ1.5%)。特に、「Lenvima」投与群では、完全奏効が1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。「Lenvima」投与群において高頻度(頻度40%以上)に認められた副作用は、高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、疲労・無力症(59.0%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、悪心(41.0%)でした。

本剤は、現在、日本、欧州のほか、スイス、韓国、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリア、ブラジルで承認申請中であり、欧州では迅速審査品目に指定されています。引き続き、世界各国で本剤の承認申請を進め、承認取得後には当社が各国での販売を行なう予定です。また、本剤に関しては、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験や腎細胞がん、非小細胞肺がんなど複数のがん腫を対象にした臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

2012年の甲状腺がんの新規診断患者数は米国で約52,000人と推定されています。甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんの治療選択肢は限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。当社は、「Lenvima」を甲状腺がんの新たな治療選択肢としてお届けするとともに、引き続き本剤によるがん治療の可能性を追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

以上

<参考資料>

1. 「Lenvima」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について

「Lenvima」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)をはじめ、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、および血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。特に甲状腺がんの増殖、腫瘍血管新生に関与するVEGFR、FGFRおよびRETを同時に阻害します。また、本剤は、VEGFR2とのX線結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された最初の薬剤であり、速度論的解析からは、素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています1

現在、「Lenvima」は、甲状腺がんに係る適応で、米国で承認を取得し、日本、欧州、スイス、韓国、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリア、ブラジルで申請中です。また、肝細胞がん(フェーズⅢ)や腎細胞がん(フェーズⅡ)、非小細胞肺がん(フェーズⅡ)、子宮内膜がん(フェーズⅡ)など複数のがん腫を対象にした臨床試験が進行中です。なお、レンバチニブは、日本(甲状腺がん)、米国(局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんの治療に関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

2. 新規結合様式(タイプV)について1

キナーゼ阻害剤は、標的キナーゼへの結合部位と阻害剤が結合した際にキナーゼがとるコンフォーメーションの違いにより、タイプI~Vに分類されます。これまでに承認されているチロシンキナーゼ阻害剤の多くはタイプIあるいはタイプⅡに属しますが、「Lenvima」は、X線結晶構造解析により、既存薬とは異なるタイプVの結合様式を有する阻害剤であることが明らかになりました。また、「Lenvima」は速度論的解析実験から、素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されており、これには新規結合様式が寄与していると推察されています。

3. SELECT試験について

SELECT(Study of E7080 “LEnvatinib” in Differentiated Cancer of the Thyroid)試験は、過去13カ月以内に画像診断により病勢進行が確認され、VEGF受容体を標的とする治療歴が1レジメン以内である放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様を対象に、「Lenvima」(24mg)またはプラセボを1日1回経口投与する(「Lenvima」投与:プラセボ投与 = 2:1)、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床第Ⅲ相試験として実施されました。本試験では、主要評価項目として両群の無増悪生存期間について比較が行われ、また、副次評価項目として、奏効率(完全奏効率および部分奏効率の割合)、全生存期間および安全性が評価されました。本試験は、SFJ Pharma Ltd.との提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加し、392人の患者様が登録されました。

4. 甲状腺がんについて

甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。男性より女性に多く発症します。最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状腺がん(Differentiated Thyroid Cancer: DTC)として分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、髄様がん(頻度:1~2%)があります。分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に適さない少数の患者様もいます。

5. SFJ Pharmaceuticals Groupの概要

SFJ Pharma Ltd.を含むSFJ Pharmaceuticals Group(以下、SFJ)は、世界のトップの製薬・バイオテク企業にユニークな共同開発提携モデルを提供しているグローバル医薬品開発会社です。SFJは、経済的強みと医薬品開発専門家によるコアチームを有しており、製薬・バイオテク企業のもっとも有望な医薬品開発プログラムに対する資金の負担や、臨床開発・薬事承認までの管理業務の提供について高度にカスタマイズされた提携モデルを提供しています。

  • 1
    Okamoto K, et al. Distinct Binding Mode of Multikinase Inhibitor Lenvatinib Revealed by Biochemical Characterization. ACS Med. Chem. Lett. 2015; 6, 89–94