第68回米国てんかん学会議にて抗てんかん剤「Fycompa®」の強直間代発作の併用療法に関する臨床第Ⅲ相試験結果を発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、12月5日~9日に米国・シアトルで開催されている第68回米国てんかん学会議(AES2014)において、自社創製の抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル)について、てんかんの中でも重篤な発作型の一つである強直間代発作(二次性全般化発作を除く、以下PGTC発作)を有する患者様を対象とした臨床第Ⅲ相試験(332試験)の結果を発表したことをお知らせします(演題番号:2389)。また、本演題は、AES2014のオフィシャルプレスプログラムに選択され、12月7日に開催されたプレスカンファレンスにおいて発表されました。

332試験は、PGTC発作を有する12歳以上の患者様164名を対象とした、他剤併用時における「Fycompa」の有効性、安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。本試験では、1~3種類の抗てんかん剤による治療を受けている対象患者様が、「Fycompa」投与群またはプラセボ投与群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付けられました。

本試験の主要評価項目は、PGTC発作頻度変化率(投与後28日間あたりの発作回数の投薬前からの減少の割合)とPGTC発作頻度50%減少達成率(治療維持期28日間あたりの発作回数が投薬前と比較して50%以上減少した被験者の割合)です。PGTC発作頻度変化率は、Fycompa投与群で76.5%となり、プラセボ投与群における38.4%との比較で統計学的に有意な減少を示しました(p<0.0001)。さらに、PGTC発作頻度50%減少達成率においても、Fycompa投与群 は64.2%となりプラセボ投与群の39.5%と比較し統計学的に有意な改善を示しました(p=0.0019)。

また、既存の抗てんかん剤で発作を十分コントロールできていない難治性のPGTC患者様を対象とした本試験において、Fycompa投与群では、30.9%の患者様が治療維持期13週間にわたりPGTC発作について無発作の状態が維持されました(プラセボ投与群では12.3%)。

主な有害事象(Fycompa投与群で10%より発生頻度が高く、かつプラセボ投与群より発生頻度が高かった)は、めまい(Fycompa投与群 vs プラセボ投与群 = 32.1% vs 6.1%)、疲労(同 14.8% vs 6.1%)、頭痛(同 12.3% vs 9.8%)、傾眠(同 11.1% vs 3.7%)、易刺激性(同 11.1% vs 2.4%)でした。

本剤は、自社創製のファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択的、非競合AMPA受容体拮抗剤です。本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法を適応として、欧米を中心に現在40カ国以上で承認され、15カ国以上で発売されています。また、本試験結果を基に、2014年8月、欧米当局に対して、12歳以上のPGTC患者様に対する併用療法に関する適応追加申請を行いました。

当社は、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、「Fycompa」をはじめ、本領域に豊富な製品ラインナップを有しており、これら複数の治療オプションを提供することで、てんかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上に引き続き貢献してまいります。

PGTC発作頻度変化率は米国申請用、PGTC発作頻度50%減少達成率はEU申請用の主要評価項目

以上

<参考資料>

1.「Fycompa」(一般名:ペランパネル)について

「Fycompa」は、当社が創製した新規化合物であり、AMPA受容体に対して非競合的な拮抗剤です。本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する抗てんかん剤です。本剤は、1日1回経口投与の治療剤であり、部分てんかんの併用療法に係る適応で欧米を中心に40カ国以上で承認を取得し、日本・アジアでは臨床第Ⅲ相試験(335試験)を進行中です。強直間代発作(二次性全般化発作を除く、PGTC発作)の併用療法については、米国、欧州、日本、アジアで実施した臨床第Ⅲ相試験(332試験)において主要評価項目を達成し、現在、米国ならびに欧州で適応拡大を申請中です。日本では現在進行中の部分てんかん併用療法とあわせて2015年度中に申請を予定しています。また、部分てんかんの小児適応では、米国、欧州において臨床第Ⅱ相試験が進行中です。

2. 332試験の概要

※左右にスクロールできます

対象 1~3種類の抗てんかん剤による治療を受けているPGTCを有する12歳以上の患者様164名
主要目的 強直間代発作(二次性全般化発作を除く、PGTC)を有する患者を対象として、他剤併用時におけるペランパネルの有効性をプラセボと比較検証する。
投与法 プラセボ対照(Fycompa投与群:プラセボ投与群 = 1:1)、ペランパネル(経口用錠剤)1日1回投与、治療漸増期に8mg/日まで漸増し、治療維持期に8mg/日投与
治療期間 観察期(スクリーニング期及び観察期)最長12週間
治療期(治療漸増期4週間及び治療維持期13週間)17週間
継続投与期 38週間以上
実施地域 米国、欧州、日本、アジア
主要評価項目
  • PGTC発作頻度変化率(米国申請用主要評価項目):
    治験薬投与後28日間あたりのPGTC発作回数の投薬前からの減少の割合
  • PGTC発作頻度50%減少達成率(EU申請用主要評価項目):
    治療維持期28日間あたりのPGTC発作回数を投薬前と比較して50%以上減少した被験者の割合

3. 強直間代発作(二次性全般化発作を除く、PGTC発作)について

てんかんの患者様数は、日本が100万人、欧州(G5)が240万人、米国が220万人、世界中で5,000万人超と報告されています。てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約 4割を占める全般てんかんに大別されます。PGTC発作は全般てんかんにおける最も一般的かつ重篤な発作型の一つであり、全般てんかんの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます。1 PGTC発作は、多くの患者様でなんら予告症状なしに意識喪失を生じ、急激な強直性筋収縮による転倒に次いで、間代性けいれんを経て、筋弛緩し、意識障害に至る重篤な経過を辿ることから、日常生活上の支障が大きいことが知られています。発作は数分で治まり、しばらく意識不鮮明やもうろう状態あるいは睡眠に移行した後、正常に戻るのが一般的な経過です。

  • 1
    Hauser WA, et al. Epilepsia, 34(3):453-468,1993