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ニュースリリース

2014年11月7日

ドイツ連邦合同委員会(G-BA)による抗てんかん剤「Fycompa®」に関する決定について

 エーザイ株式会社(本社:東京、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、ドイツ連邦合同委員会(G-BA)が、当社創製の革新的な抗てんかん剤「Fycompa®」(一般名:ペランパネル)の保険償還に向けた評価において、既存の抗てんかん剤に対する追加有用性が証明できないと結論づけたことをお知らせします。今回のG-BAによる結論は、本剤の革新性がもたらす臨床的価値や患者様のニーズを正しく評価しておらず、大変遺憾です。当社は引き続き、本剤の価値に対する正しい理解を当局に対して求めてまいります。

 本剤は、自社創製のファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択的、非競合AMPA受容体拮抗剤です。本剤は、12歳以上のてんかん患者様の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法を適応として、2012年7月にEU27カ国で承認され、既に域内9カ国で発売されています。また、グローバルには米国を含め現在40カ国以上で承認され、15カ国で発売されています。

 当社は、今回のG-BAの評価に際し、計1,480人の他剤無効の難治性部分てんかん患者様を対象にした、3つの申請用グローバル臨床第III相試験の結果を提出しました。これらの試験は、いずれも無作為化、二重盲検、プラセボ対照、投与量漸増試験として実施され、すべての試験において、部分てんかん併用療法として一貫して優れた有用性を示しました。なお、主な有害事象は、めまい、眠気、けん怠感、頭痛、転倒、神経過敏および運動失調でした。さらに、これらの臨床第III相試験と併せて提出したドイツ、オーストリアのてんかん専門9施設で実施した6カ月間の観察試験では、本剤による治療を受けた難治性てんかん患者様281名のうち、約半数において発作頻度が50%以上減少し、約15%の患者様では観察期間中に発作が生じませんでした。今回のG-BAの結論は、このような本剤の臨床的価値ではなく、プラセボを比較対照薬とした試験結果を保険償還に向けた評価においては認めないという方法論に基づいています。プラセボを対照とした難治性の部分てんかんに対する併用療法のプロトコルは、米国および欧州当局が薬事承認に必要な臨床試験として認めたもので、今回の決定は極めて不合理で遺憾です。今後、ドイツにおけるてんかん関連の新薬を患者様に届けることができなくなることを憂慮するものです。

 てんかんは、世界的にも最もよく見られる神経疾患であり、ドイツには50万人を超えるてんかん患者様がいると推定されています。部分てんかん発作の抑制は難しく、約30%の患者様は、既存の抗てんかん剤による適切な治療にも関わらず、発作を十分にコントロールできていません。このような難治性てんかんの患者様にとって、発作をよりコントロールできる可能性のある本剤のような新たな治療オプションは希望であり、臨床現場では新たな作用機序を持つ革新的新薬が強く望まれています。

当社は、2012年9月にドイツで本剤を発売しましたが、2013年3月のG-BAによる追加有用性評価において本剤の有用性、革新性が適切に認められなかったことを受け、ドイツでの販売を一時中断するとともに、本剤を必要とする患者様には無償提供プログラムを実施しています。その後、追加有用性評価制度が一部改正されたことに伴い、2014年5月にG-BAに対して追加有用性再評価の申請をしていました。

 当社は、革新的新薬を必要とされているドイツの部分てんかん患者様のもとに、本剤を確実にお届けできるように、引き続き、関係当局に本剤の価値に対する正しい理解と評価を求めてまいります。


以上

<参考資料>

1. 用語解説
1) ドイツ連邦合同委員会(G-BA)
 医師、歯科医師、病院および疾病金庫からなる独立したドイツにおける医療制度の最高意思決定機関であり、医薬品をはじめとする医療サービスに関する保険償還などについての決定権を有しています。

2) G-BAによる追加有用性評価について
 2011年1月に施行された医薬品市場再編法(AMNOG)により、ドイツで発売された全ての新薬はG-BAによる追加有用性評価を受けることが義務付けられ、この評価に基づく価格交渉を経て、発売後1年以内に償還価格が決定されることになりました。
 新製品上市に際して、製薬企業は比較治療薬に対する追加的な有用性を示すデータ(benefit dossier)を提出する必要があります。G-BAからの委託を受けたIQWiGは、製薬企業が提出した資料をもとに比較治療薬に対する追加有用性の有無とそのレベルを評価します。IQWiGの評価に対して製薬企業にはヒアリングによるコメントの機会が与えられ、G-BAが当該薬剤に対する有用性評価を最終判断します。
 G‐BAによる追加有用性が認められた場合には、公的医療保険協会(GKV-SV)との価格交渉段階に進み、G-BAによって設定された有用性レベルに基づき償還価格が決定されます。一方、追加有用性が認められないと判断された薬剤には、原則参照価格が適用され、ジェネリック等の最も安価な既存の治療薬と同レベルの価格に設定されます。

2. てんかんの併用療法について
 てんかん患者様の治療ゴールはてんかん発作の抑制です。てんかんと診断されると抗てんかん薬の単剤療法で治療を行いますが、発作抑制効果が十分でない場合には、他の単剤療法に切り替えます。しかし、約3~4割の患者様は、2種類の単剤療法を試みても発作を抑制できないことが報告されており、その場合には併用療法に移行します。「Fycompa」のようなてんかんの併用治療薬は、既存治療への上乗せ(add-on)として使用されます。このような臨床実態に基づき、難治性てんかんに対する新薬の薬事承認のための臨床開発ガイドラインでは、既存の治療薬に上乗せするプラセボとの比較対照試験がスタンダードとなっています。「Fycompa」の申請用臨床第III相試験についても、ガイドラインに則って実施されました。


図1

Fycompaの臨床第III相試験のデザイン


3. 「Fycompa」(ペランパネル)について
 「Fycompa」は、当社が創製した新規化合物であり、AMPA受容体に対して非競合的な拮抗剤です。本剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する抗てんかん剤です。本剤は、1日1回経口投与の治療剤であり、部分てんかんの併用療法に係る適応で欧米を中心に40カ国以上で承認を取得し、日本・アジアでは臨床第III相試験(335試験)を進行中です。全般てんかんの最も一般的かつ重篤な発作型の一つである強直間代発作(二次性全般化発作を除く、PGTC)の併用療法については、米国、欧州、日本、アジアで実施した臨床第III相試験(332試験)において主要評価項目を達成し、現在、米国、欧州で適応拡大を申請中です。日本では現在進行中の部分てんかん併用療法とあわせて2015年度中に申請を予定しています。また、部分てんかんの小児適応では、米国、欧州において臨床第II相試験が進行中です。