米国研究子会社H3 BiomedicineがSelvita社と新規抗がん剤の創出に向けた共同研究契約を締結

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、米国研究子会社H3 Biomedicine Inc.(所在地:マサチューセッツ州、社長:Markus Warmuth、以下、H3 Biomedicine)が、東欧最大の創薬研究会社の一つであるSelvita S.A.(所在地:ポーランド、社長:Pawel Przewiezlikowski、以下、Selvita)と、新規抗がん剤の創出に向けた共同研究契約を締結しましたのでお知らせします。本契約に基づき、両社は特定の遺伝子状態により悪性化したがんに対して、創薬ターゲットとなるリン酸化酵素(以下、キナーゼ)を同定および精査し、そのキナーゼを標的とした新規抗がん剤の創出をめざします。

近年のヒトがん遺伝子研究の進展により、新しいがん治療コンセプトにつながる有望な創薬ターゲットが明らかにされてきています。H3 Biomedicineは、がんの根本原因にあたる遺伝子を同定し、その遺伝子状態をもつ特定のがんに高い有効性を示す薬剤の開発をめざしており、その創薬アプローチを支える基盤技術として、膨大な遺伝子情報を解析する独自のバイオインフォマティクスおよび創薬標的の妥当性を検証するターゲットバリデーション技術を保有しています。一方で、Selvitaは2008年以来、独自のキナーゼ探索プログラムに取り組み、現在、世界でも有数のキナーゼ探索技術基盤を築いています。本共同研究は、両社の基盤技術を補完的に融合し、がんの遺伝子情報に基づいた創薬標的としてのキナーゼの同定と、その標的に対する創薬研究を加速するものです。

H3 Biomedicineは、最新のヒトがん遺伝子情報に基づいて創薬ターゲットを同定し、前臨床、臨床研究を通じた創薬ターゲットの妥当性検証(POC)を達成することで、画期的な新薬を確度高く創出することをめざしています。当社は、H3 Biomedicineが掲げる挑戦的な創薬ビジョンを共有し、有用性の高い革新的ながん治療薬を患者様にお届けすることで、グローバルに貢献してまいります。

以上

[参考資料として、Selvita S.A.、H3 Biomedicine Inc.について添付しています。]

<参考資料>

1. Selvita S.A.について

Selvita S.A.(以下、Selvita)はポーランドのバイオテクノロジー企業であり、がん、中枢そして自己免疫疾患領域における画期的な医薬品の創出に向けた探索および開発研究に注力するとともに、医薬品探索研究のサービス提供をしています。Selvitaは2007年に設立され、現在53人の博士号を有する研究者を含む162人の従業員が在籍しています。Selvitaは現在、早期から後期の探索プロジェクトを複数保有しており、2014年には最初の化合物が臨床段階に進む予定です。その中で最も進んでいる前臨床プログラムは、様々な造血器腫瘍を対象としたPimキナーゼ阻害剤「SEL24」、およびファーストインクラスとなるCDK8の低分子阻害剤「SEL120」となります。その他の革新的プロジェクトは現在進行中のものとして、早期探索ステージにあるアルツハイマー型認知症およびダウン症候群に効果が期待されるDYRK1Aキナーゼ阻害剤「SEL141」、がん領域における新規の低分子MNK1/2阻害剤「SEL201」を保有し、がん代謝研究技術基盤およびインフラマソーム研究技術基盤を備えています。Selvitaは、50社以上の欧米の製薬企業とバイオテクノロジー企業に創薬探索サービスを提供しています。Selvitaはポーランドのワルシャワ証券取引所のNewConnectに上場しています。Selvitaについて、より詳細な情報はhttp://www.selvita.com/をご覧下さい。

2. H3 Biomedicineについて

当社の米国研究子会社であるH3 Biomedicineは、個別化医療を志向した、がん治療薬の創出と開発に特化したバイオファーマです。H3 Biomedicineは、がんの根本原因に関連する遺伝子情報をもとに、特定のがんに高い有効性が期待される創薬ターゲットに対する薬剤の開発をめざしています。

1)会社概要

会社名 : H3 Biomedicine Inc.
所在地 : 米国マサチューセッツ州ケンブリッジ
社長 : Markus Warmuth
事業内容 : 医薬品の研究開発
従業員数 : 約70人
設立日 : 2010年12月13日
ホームページ : http://www.h3biomedicine.com/

2)創薬戦略について

H3 Biomedicineの創薬アプローチには二つの原則があります。一つは、がん患者様の個々の遺伝子情報に着目し、バイオインフォマティクス技術を駆使してがんの根本原因に関連する遺伝子の候補を同定することです。同定された遺伝子の機能の検証を行った上で、がん治療のための標的分子を選定し、最適な評価系の確立を行います。二つ目の原則は、得られた標的分子が、従来の創薬方法論ではアプローチが困難と考えられてきたものであっても、それらが病因に関与する重要な標的である限り、断固として追求することです。その実現のために、多様性指向型合成(天然物を構造モチーフとして、構造的に多様性に富んだ低分子群を系統的かつ簡便に構築する合成技術)と呼ばれる次世代合成技術を活用し、化学構造の複雑さと合成の行いやすさのバランスをとりつつ、骨格と立体構造の多様性を確保するユニークな化合物ライブラリーを創製します。また、遺伝子情報をプロスペクティブに用いて、バイオマーカー研究を効果的に進め、がん患者様の個別化医療を志向するとともに、全開発期間の短縮をはかり、がんと闘う患者様に一日でも早く革新的な治療薬をお届けすることをめざしています。