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ニュースリリース

(2007年10月30日) 印刷用(PDF 53KB)

AMPA受容体拮抗剤E2007のパーキンソン病適応開発計画の変更について


 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、世界初の経口AMPA受容体拮抗剤をめざし、現在、パーキンソン病、神経因性疼痛、てんかん、片頭痛予防、多発性硬化症などの適応でグローバルに開発を進めているE2007(一般名:perampanel)について、第一番目の適応として2007年度中に欧米で申請を予定していたパーキンソン病適応の申請時期を2008年度第4四半期へ変更することとしました。
 本剤は、当社が創製した新規化合物であり、グルタミン酸受容体のサブタイプであるAMPA受容体に選択的に拮抗する従来にない新しいメカニズムを有する薬剤です。神経にはAMPA受容体が広く分布していることから、神経領域疾患の治療薬として様々な可能性があります。

 当社は、パーキンソン病を対象とした3つのフェーズⅢ試験(301試験、302試験、309試験)を欧米中心に進めていますが、このたび、プラセボを対照としてレボドパ治療中の特発性パーキンソン病の運動機能に対する効果を30週間の投与期間で評価することを目的に実施された301試験が終了し、現在、解析を進めています。
 現時点での判明事項として、主要評価項目であるオフタイム(レボドパの効果が不十分でパーキンソン症状が現れる時間)の短縮に関しては本剤投与群とプラセボ投与群との間に差が認められませんでした。一方で、本剤の良好な安全性と高い忍容性が確認されました。
 本剤は、前臨床試験において、レボドパの作用時間を延長し、レボドパによるパーキンソン症状の改善時間を延長する結果が示されており、併せてレボドパにより引き起こされるディスキネジアも改善する結果を得ています。また、フェーズⅡPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)204試験では、有意な用量相関性をもってオフタイムを短縮する効果が認められました。これらの結果から、本剤はレボドパの作用時間を延長し、パーキンソン病に効果を示すことが期待されます。

 当社としては、301試験に関する詳細な解析(レボドパの用量や併用他剤の影響など)を進め、その結果を、現在進めている302試験、309試験の解析方針に反映させ、パーキンソン病に対する有用性をより明確に示したいと考えています。この方針のもと、301試験、302試験および309試験の結果をもって、2008年度第4四半期に欧米で申請することを目指します。
 本剤は、神経因性疼痛、てんかんなどを対象とした開発も進めており、パーキンソン病に続き、2010年度には神経因性疼痛を適応とした申請を計画しています。

当社は、本剤のほか様々な新薬の開発を通して、脳神経領域疾患の患者様の治療、QOL向上に貢献することを目指します。
以上


[参考資料として、AMPA受容体とE2007、E2007の試験概要を添付しています]



<参考資料>



1. AMPA受容体とE2007
 グルタミン酸は中枢神経細胞で伝達物質として利用されており、このグルタミン酸受容体の過剰刺激によりカルシウムイオンの細胞内への過剰な流入を生じ、中枢神経の細胞死を起こすことが知られています。AMPA受容体は、3タイプあるイオンチャンネル型グルタミン酸受容体のひとつのタイプであり、中枢神経系のほとんど全ての興奮性シナプスにおける迅速な神経伝達を仲介していると言われています。
 E2007は、このAMPA受容体に選択的に拮抗し、神経細胞死を抑制します。この作用に基づく、神経変性疾患への新規な応用方法に関して、当社のロンドン研究所が中心となって探求を進め、英国の権威ある医学雑誌Nature Medicine誌に掲載されました。 (L. Steinman, Nature Medicine 6 (1) 15-16, 2000)

2. E2007のパーキンソン病に関する前臨床試験
1) パーキンソン病モデルでのE2007の効果
 パーキンソン病モデルとして知られているMPTP(1-methyl 4-phenyl 1,2,3,6-tetrahydropyridine)処置モデルを用いてL‐DOPAとE2007を併用した試験において、E2007はL‐DOPAによる抗パーキンソン症状改善作用の最大薬効に影響を与えず、有効時間を有意に延長し、最大薬効発現時間に見られるディスキネジアの重篤度を有意に改善しました。
※International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disordersにおいて発表(2006年11月2日)

2) L-DOPAによるRotational behaviorに対する作用
 6-OHDA誘発片側黒質破壊モデルにおいて、E2007はL‐DOPAの作用時間を延長しました。
※International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disordersにおいて発表(2006年11月2日)

3. E2007のパーキンソン病に関する臨床試験
1) 204試験
プラセボ対照フェーズⅡPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)試験
対象 :維持量のレボドパによる治療中で、症状の日内変動ならびにディスキネジアを伴ったパーキンソン病患者
目的 :創薬概念の検証
投与群 :E2007 0.5mg、1mg、2mgおよびプラセボ
投与期間 :12週間
主要評価項目 : オフタイムの変化

<結果>
  • オフタイムの短縮について統計的に有意な用量相関が認められた。
  • オフタイムの短縮について各投与量群とプラセボ群との間で統計的有意差は認められなかったが、高用量(2mg)投与群において、臨床的に意味のある有効性を示した。
  • 良好な安全性プロファイルが認められた。
  • ディスキネジアの悪化は認められなかった。

2) 301試験
プラセボ対照フェーズⅢ試験
対象 :"Wearing-off"型の運動失調を来たすレボドパ治療中の特発性パーキンソン病
目的 :E2007 2mg、4mg およびプラセボの運動機能に対する効果の比較
投与群 :E2007 2mg、4mg およびプラセボ
投与期間 :30週間
主要評価項目 : オフタイムの変化

3) 302試験
プラセボ対照フェーズⅢ試験
対象 :"Wearing-off"型の運動失調を来たすレボドパ治療中の特発性パーキンソン病
目的 :E2007 2mg、4mg およびプラセボの運動機能に対する効果の比較
投与群 :E2007 2mg、4mg およびプラセボ
投与期間 :20週間
主要評価項目 : オフタイムの変化

4) 309試験
プラセボ、エンタカポン対照フェーズⅢ試験
対象 :"Wearing-off"型の運動失調を来たすレボドパ治療中の特発性パーキンソン病
目的 :E2007 4mg およびプラセボとエンタカポンの運動機能に対する効果の比較
投与群 :E2007 4mg、プラセボおよびエンタカポン200mg
投与期間 :18週間
主要主評価項目 : オフタイムの変化
以上