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身近な生活にある薬用植物 東西の冬至
 ご存知のように、冬至は北半球では1年でもっとも太陽の高度が低く、昼が短い1日です。太陽暦では大体12月22日前後になります。かつて科学が未発達だった時代、日に日に太陽の光が射す時間が少なくなっていくのは、さぞかし心もとなく感じたことでしょう。洋の東西を問わず、この日に何らかの行事を行うことからも、日の光の復活を祈る気持ちの強さを想像することができます。
 中国や日本では、冬至は太陰暦の二十四節気のひとつであり、陰の気が最も衰えると同時に陽の気の生長が始まる日として重要視されていました。そのため中国では、皇帝が天壇で豊穣と天下泰平を祈願する儀式を行いました。
 西洋では国や民族によって違いがありますが、もともとの民俗的な冬至の行事に、キリスト教の行事が習合しているものが多いようです。特に聖ニコラウスは12月6日を祭日としており、その偉業をたたえる劇がやがてサンタ・クロースの訪問になったとされています。お供のルプレヒトが鞭を持っているのも、もともとはこどものしつけのためではなく、若い枝を戸口に飾ってクリスマスと新年を迎える習俗に由来するとされています。このほか、地域によっては、悪霊を追い払う役目の精霊たちが聖ニコラウスの一行に加わり、闇や悪霊を追い払って、太陽をよみがえらす行事となっているところがあります。
 日本では収穫のすんだ野菜を備える意味と、万物の生命力が低下するために栄養価のあるものを食する風習から、名前に「ン」や「とう」のつくものを食べる風習があります。また、大師講といって、冬至に山から一本足のお大師様という神様が降りてきて、新しい生命力をもたらすので、その神様に供え物をする信仰もあります。また、“融通” がきくという意味で、柚子湯に入る風習もあります。
 暗く長い冬を収穫物の恩恵によって健康に過ごし、樹木の芽によって、生命あふれる春の到来を待つ。ものがあふれ、豊かになったといわれる現代にあっても、そのようなつつましい気持ちは、忘れずに持ち続けていたいなと思います。

記事:内藤記念くすり博物館
         稲垣  裕美 (2007年12月)
【日本】
アズキ
イネ (沖縄で雑炊として)
ユズ
<ンがつく食べ物>
キンカン
コムギ (「うどん」として)
コンニャク
ミカン
<トウのつく食べ物>
カボチャ (「トウナス」として)
ダイズ (豆腐として)
トウガラシ
フキノトウ

【ヨーロッパ】※冬至の行事は、クリスマスの行事に習合しているものが多いため、クリスマスに関連する植物も含む。
<飾り>
ヨーロッパモミ(ドイツ南部以西ヨーロッパ/ゲルマン人の樹木信仰に由来。後にキリスト教の行事に吸収された)
トウヒ・ドイツトウヒ(イギリス、北欧)
セイヨウヒイラギ(古代ヨーロッパで、ドルイド教徒が母なる神ホーレに捧げた習俗に由来)
セイヨウヤドリギ(夏の象徴・光の神バルデルは冬と暗黒の神・ホデルにこの木の矢で射られて死ぬ。現在では、ヤドリギの下にいる女性にキスできる風習が残る)
<習俗>
ニュウコウジュヨモギイラクサニンニク、カヤ(祈りを唱えながら燻して清める)
リンゴ(モミに実を吊るすところがある)
セイヨウナシ(木を藁や縄で縛り、叩いて豊作を祈る)
アンズ(暖かい部屋に置いた枝の芽の出方で、翌年の農作物の豊凶を占う)

<参考文献>
『健康と病の民俗誌』宗田一著 健友館 1984
『植物と行事』(朝日選書)湯浅浩史著 朝日新聞社 1994
『ヨーロッパ歳時記』(岩波新書)植田重雄著 岩波書店 1983
『守護聖者』(中公新書)植田重雄著 中央公論社1991


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