母がママさんコーラスに入っていたので、幼稚園に通っていた私は、その練習によくくっついて行きました。ある日、椅子に腰掛けて聞くともなしに歌を聴いていると、隣りにおじさんが座りました。おじさんはおとなしくしている私を褒めてくれて、お菓子をくれました。翌年、小学校にあがった時、そのおじさんが校長先生だったとわかり、母と二人、びっくりしました。 　ママさんコーラスでよく歌われていた愛唱歌を聴くと、自然にその時の風景を思い出します。木造校舎の窓からやわらかい陽射しがさしこむ中、黒板の前に並んだ若い頃の母たちがオルガンの伴奏にあわせて合唱している風景です。木造校舎は次の年に建て替えられてしまったので、それはもうまぼろしの風景になってしまいました。 　歌のリストを作りながら、思わずくちずさんだ歌がいくつもありました。このリストは、私が歌ったことのある曲から選びましたので、「あの曲が入ってない」という方もいらっしゃるかと思います。また、歌詞を掲載していませんので、「この曲、植物出てきたっけ？」という歌もあることでしょう。そこはぜひ、家族やお友達とご一緒に歌ってみて、思い出してみてください。（普段は歌われない2番や3番に出てくる場合もあります。） 　また、「水師営（すいしえい）の会見」は軍歌謡ですが、明治生まれの祖母がお手玉歌として教えてくれたため、ここに入れました。なお、リストに挙げた曲の中で私が好きな歌は「鞠（まり）と殿さま」です。手まりは何になったでしょう？ 歌の名前 植物名 赤い河の谷間 サボテン 赤とんぼ クワ あのこはたあれ（だあれ） ナツメ あめふり ヤナギ 一月一日 マツ、タケ 美しき天然 サクラ、（モミジ）、マツ うれしいひなまつり モモ 踊ろう　楽しい　ポーレチケ （ドングリ） 朧月夜（おぼろづきよ） ナタネ お山の杉の子 シイ、スギ 肩たたき ケシ（ヒナゲシ） カチューシャ リンゴ かなりや（カナリヤ） ヤナギ からたちの花 カラタチ 鯉のぼり タチバナ 荒城の月 マツ、（カズラ） 五月の歌 スミレ 故郷の空／麦畑 ハギ、ススキ／ムギ この道 アカシア、サンザシ さくらさくら サクラ サッちゃん バナナ サモア島の歌 ヤシ シューベルトの野ばら バラ 証城寺（しょうじょうじ）の狸囃子（たぬきばやし） ハギ 水師営（すいしえい）の会見 ナツメ ずいずいずっころばし ゴマ、イネ 大こくさま（大黒様） ガマ たきび サザンカ たなばた ササ ちいさい秋みつけた ハゼ ちゃっきり節 タチバナ、チャ 茶摘 チャ チューリップ チューリップ ちょうちょ ナタネ（ナノハナ） 鉄道唱歌 イチョウ、ナタネ（ナノハナ） トロイカ シラカバ とんがり帽子 ムギ どんぐりころころ （ドングリ） 仲よし小道 ナタネ（ナノハナ） 夏の思い出 ミズバショウ、シャクナゲ 夏は来ぬ ウツギ（ウノハナ） 庭の千草 キク 箱根八里 スギ、コケ 走れ　並木を ポプラ、（モミジ） 花 サクラ、ヤナギ はなのおくにのきしゃぽっぽ アネモネ 花火 シダレヤナギ ばらが咲いた バラ はるのおがわ スミレ、レンゲ 春よこい モモ ヒライタ　ヒライタ レンゲ 琵琶湖周航の歌 ツバキ ふたりの子供＜禁じられた遊び＞ ワスレナグサ まっかな秋 ツタ、（モミジ）、カラスウリ、ヒガンバナ 鞠（まり）と殿さま ミカン みかんの花咲く丘 ミカン 紅葉 カエデ、ツタ、（モミジ） もみの木 モミ ももたろう（桃太郎） キビ 揺籃（ゆりかご）のうた ビワ 宵待草（よいまちぐさ） マツヨイグサ りんごのひとりごと リンゴ われは海の子 マツ ＜参考文献＞ 「日本の詩歌」別巻　日本歌唱集　（中公文庫）　中央公論社　1989 「別冊太陽「子どもの昭和史　童謡・唱歌・童画100」　平凡社　1993 「ファミリア・コーラス」　野ばら社　1968 「日本の唱歌」[上]（講談社文庫）　金田一春彦、安西愛子編　講談社　1983 ※植物名は、参考文献に記載された歌詞によりました。外国の民謡などは複数の作詞・訳詞があり、ここに挙げた植物名が出てこない場合もあります。また、当初詩歌として発表され、後に曲がつけられた歌で、原詩にのみ登場する植物も含みます。 ※「ドングリ」「モミジ」「カズラ」は特定の植物ではありませんが、思い浮かべやすい植物として、また、「マツ」は「青松白砂」「松原」などもリストに入れました。 記事：内藤記念くすり博物館          稲垣  裕美 （2008年12月）