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身近な生活にある薬用植物 西遊記〜孫悟空の薬草〜
 「西遊記」といえば、おなじみ孫悟空の登場する物語で、この夏、香取慎吾さん主演の映画も公開され、注目されてる方も多いと思います。
この物語は、16世紀半ばの中国で呉承恩によって書かれました。孫悟空は筋斗雲に乗り、如意棒を振るって妖怪と戦い、経典を求めて猪八戒や沙悟浄とともに三蔵法師を守って旅をしていきます。

 「西遊記」には、さまざまな妖怪や妖術が登場しますが、その術を破るための薬も登場してきます。
烏鶏国の話では、死んでしまった国王を生き返らせるために、兜率宮(とそつきゅう)の太上老君(たいじょうろうくん)に九転還魂丹をもらいます。黄花観の道士のくだりでは、丸薬を作っている道士が実は妖怪で、ナツメの実に毒を塗って茶に入れ、三蔵法師らに飲ませます。しかし、孫悟空が毘藍婆(びらんば)菩薩にもらった解毒丹という丸薬を飲ませて、皆は息を吹き返します。羅刹女(らせつじょ)の話では、霊吉(れいきつ)菩薩が孫悟空に定風丹という薬を与えます。ただこれは、「風を止めるくすり」で、羅刹女の芭蕉扇(ばしょうせん)の風に吹き飛ばされないようにするものです。

 朱紫国の段には、薬草や治療の様子が出てきます。漢方医学の診断法の望(視る)、聞(聴く・嗅ぐ)、問(症状を問う)、切(脈を触る)の必要性について孫悟空が語るくだりや、腕から糸を引いて脈を取る懸糸診脈の話、製薬道具として薬研(やげん)・臼・ふるい・乳鉢と乳棒も登場します。
また、孫悟空は国王の病を治すために、もったいぶって八百八味の薬をそれぞれ3斤ずつ取り寄せます。しかし実際に使ったのは大黄・巴豆(ハズ)、そしてなべ墨(百草霜;ひゃくそうこう)、馬(実は龍の変化したもの)の尿! これを無根水(天から降ってきた雨水が地に落ちる前に受けたもの)とともに病気の国王に飲ませ、回復させます。ただその後、お礼のもてなしを受けたときに、猪八戒がうっかり「この薬には馬の(尿が)・・・」と言いかけてしまいます。そのため、国王に「何が入っているのか?」と質問されますが、孫悟空はすかさず、「馬兜鈴(バトウレイ)を用いました」とすまし顔で答えます。

 こどもの頃は、次々と展開するお話に心を躍らせましたが、今読むと、医薬に関する考え方やことわざ、当時の風習などがたくさん盛り込まれているのがよくわかります。この物語が長く読みつがれてきたのは、荒唐無稽なストーリーの下に、きちんと実際の生活文化が書き込まれているからなのでしょう。


記事:内藤記念くすり博物館
         稲垣  裕美 (2007年6月)
ダイオウ(大黄)
ハズ(巴豆)
ウマノスズクサ(馬兜鈴)
※百草霜・・・かまどのすす(煤)のことで、「本草綱目」にも記載があります。(吐血・婦人病に用いる)
<参考文献>
「西遊記 上・中・下」 呉承恩作 伊藤貴麿編訳 岩波少年文庫 岩波書店 1976
「(新註校定国訳)本草綱目」李時珍原著 鈴木真海訳 木村康一ほか新註校定 春陽堂書店 1973-1978
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