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身近な生活にある薬用植物 七味唐辛子
 ピリリと味を引きしめて、蕎麦や湯豆腐など、料理の美味しさをさらに引きたてる七味唐辛子。唐辛子を主とする七種類の香味料がバランスよく調合されているので、それぞれの器で最後のひとふり、通称「シチミ」を好みに応じてふりかけます。唐辛子だけが原料の一味唐辛子に比べると、七種類の香りが混ざり合って辛味が少ないのが特徴です。

 七色唐辛子ともいわれましたが、「七色」は乾燥させた唐辛子の粉を原料としたのに対して、「七味」は焙煎した唐辛子の粉を用いたという違いがあったようです。また、別の説では、もともと関東地方では「七色」、関西地方では「七味」という具合に呼称が違っていたようですが、次第にどの地域でも七味唐辛子と呼ばれるようになりました。

 唐辛子は、もともとメキシコなどアメリカ大陸南部原産の植物を中南米で栽培され、インディオが痙攣や下痢の薬として使っていました。コロンブスがアメリカ大陸を発見した頃にスペインへ持ち帰ってヨーロッパで広まりました。そして日本には16〜17世紀頃、南蛮文化とともに伝わったといわれ、蕃椒という異名も持っています。辛味のもととなっているカプサイシンが中枢神経を刺激し、副腎皮質から分泌したアドレナリンが血流量を増大するため、身体がホカホカ熱くなって発汗作用があり、健胃薬、凍瘡・凍傷の治療、育毛など薬としても用いられますが、殺菌作用があり食中毒を防ぐため、食料品として暑い地域で多く消費されています。

 七味唐辛子は日本人の工夫から誕生した世界に誇れる和製ブレンドスパイスです。そのルーツは江戸・薬研堀(やげんぼり)のからしや徳右衛門が、1625年(寛永2年)に売り始めたといわれています。体によい薬を食のなかにも取り入れられないかと考案されたのが七味唐辛子でした。『やげん堀唐辛子本舗』の七味唐辛子には、生の赤唐辛子、煎った赤唐辛子、粉の山椒、黒胡麻、芥子の実、麻の実、陳皮(みかんの皮)が入っています。当時の江戸庶民が好んで食べていた蕎麦とよく合ったことから飛ぶように売れ、他店でも製造販売するようになり、紫蘇、海苔、生姜、菜種、柚子を混ぜた七味唐辛子も登場しました。「あかごけのあさちんさん=赤(唐辛子)・ご(胡麻)・け(芥子)・の(海苔)・麻(麻の実)・陳(陳皮)・山(山椒)」という種類の覚え方もあるそうです。七つの薬味は漢方薬として風邪に効くものが多く、七味唐辛子をふりかけた熱い蕎麦で、風邪の予防や弱った体が温まります。

 現在では、スーパーマーケットの食料品売場などでカレー粉や各種の香辛料を発売している大手食品メーカーが製造した瓶入りの七味唐辛子を手軽に購入することができますが、由緒ある三大七味唐辛子は、浅草寺門前『やげん堀』(江戸)、清水寺門前『七味家』(京都)、善光寺門前(信州)『八幡屋礒五郎』です。いずれも、参拝客が多く集まる寺院の門前で発展してきました。旅の道中の常備薬として、故郷への霊験あらたかな土産として、かさばらない七味唐辛子は大いにもてはやされたことでしょう。


記事:内藤記念くすり博物館
         野尻 佳与子  (2008年10月)
<代表的なもの>
トウガラシ(唐辛子、蕃椒) ゴマ(胡麻)
ケシ(芥子・ケシの実) ノリ(海苔・青海苔、青さ)
アサ(麻の実、おのみ) ミカン(陳皮・ミカンの皮)
サンショウ(山椒) シソ(紫蘇)
ショウガ(生姜) ナタネ(菜種)
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